やっと分かった
「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」と言われる。「よい麹ができれば酒は七割できたも同然」という杜氏や蔵人もいるくらい
麹(こうじ)、
酛(もと/しゅぼ)、醪(もろみ)
麹 => でんぷんを発酵させて糖化する
酛 => 糖をアルコールに変える
醪 => 仕込み、発酵の調整度合い?
パンだって、イースト菌(酵母)で、発酵させるんだろ?
人はパンのみに生きるにあらず - バッカスは酒の神さま
歩いて行けるところで、買い物
ジョッキ 100円ショップで、105円
オイル 同上、105円
グレンリベットのハイボール
公設市場で、アカナマコ
あいタウンで、豚の耳
正月用の日本酒、山廃仕込
あいタウンのパン屋で・・・
日本酒はウンチクが多すぎる・・・
---Wiki
山廃仕込み(やまはいしこみ / - じこみ)とは、単に山廃とも称され、生酛系(きもとけい)に属する日本酒の製法の一つ。 「山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)」が正式名称で、その酛で醸造した酒のことも一般に「山廃(仕込み)」と呼ばれる。
ひとくちに言えば、
山卸(やまおろし)とは、蒸した
米、
麹、水を混ぜ粥状になるまですりつぶす行程である。
酒造りが近代化される
明治時代以前は、精米は
水車で行なわれ、半切り桶の中に蒸米と水をいれ、
櫂(かい)で丹念にすりつぶすという大変な重労働であった。明治以降、
産業革命の波がしだいに日本の醸造業にもおよび、精米はある程度まで機械で行なえるようになると、これにともなって麹の酵素が白米に吸収されるので、蒸米をつぶす
山卸は必ずしも要さなくなった。蔵人のあいだでは山卸の心得を「櫂でつぶすな麹で溶かせ」などという。
山卸廃止酛 [編集]
山卸廃止酛は、
明治政府の先導でつくられた
国立醸造試験所で明治42年(
1909年)に開発された。生酛系酒母を代表する酛で、
速醸系(そくじょうけい)酒母に比べると育成時間が約2~4倍以上かかり、通常30日近くは要する。また環境温度が5℃以下でないと打瀬(うたせ)ができないという難物でもある。
打瀬 [編集]
打瀬(うたせ)とは、醸造の工程のなかで、
荒櫂(あらがい)から
初暖気(はつだき)までの間をいう。山卸廃止酛では、酒をまずくする有害な
野生酵母や雑菌が活動・繁殖できないような低温に環境を保ちながら、
乳酸菌・
硝酸還元菌など酒をおいしくする有益な酵母や菌をゆっくりと繁殖させ、pH3.5前後で乳酸を生成させ、糖化作用を行なうことをいう。
酒質 [編集]
このような難関を通り抜けると、山卸廃止酛で造った酒は、酒母そのものが
アミノ酸組成が高いために濃醇な味になり、味の腰も強く、香りも奥行きがあって芳しい。そのため、高級
ウイスキーのように、水で割っても同じ酒の味がする。また、酒母ができあがってから使用するまでの期間を工程のなかでは
枯らしというが、枯らし日数が長くなっても酒母の力が低下しないという強みも持ち合わせている。
だが、造り手である杜氏の長年の経験と高度なセンスを要求される山廃仕込みは、途中で腐敗するリスクも大きく、それなりの手間もかかるために敬遠される傾向もあり、酵母仕込み、
高温糖化酒母、
中温速醸酒母などの合理化によって山廃で仕込まなくなった酒蔵も多い。
---Wiki
日本酒(にほんしゅ)は、米を発酵させて作る醸造酒で、日本の伝統的な酒の一つである。日本の酒税法上では清酒(せいしゅ)、日本では、一般には単に酒(さけ)またはお酒(おさけ)、日本古語では酒々(ささ)、僧侶の隠語で般若湯(はんにゃとう)、江戸時代にはきちがい水、現代では俗にポン酒(ぽんしゅ)と呼ばれることもある。
日本酒の製法 [編集]
日本酒は
ビールやワインとおなじく
醸造酒に分類され、原料を発酵させてアルコールを得る。しかし、日本酒やビールはワインと違い、原料に
糖分を含まないため、
糖化という過程が必要である。ビールの場合は、完全に
麦汁を糖化させた後に発酵させるが、日本酒は糖化と発酵を並行して行う工程があることが大きな特徴である。
並行複発酵と呼ばれるこの日本酒独特の醸造方法が、他の醸造酒に比べて高いアルコール度数を得ることができる要因になっている。
日本酒は、次の過程を経て醸造される。
精米 [編集]
玄米から
糠・
胚芽を取り除き、あわせて
胚乳を削る。削られた割合は
精米歩合によって表わされる。
米に含まれる蛋白質・脂肪は、米粒の外側に多く存在する。醸造の過程において、蛋白質・脂肪は雑味の原因となるため、米が砕けないよう慎重に削り落とされ、それにより洗練された味を引き出すことができる。その反面、精米歩合が高くなればなるほど米の品種の個性が生かしにくくなり、発酵を促すミネラル分やビタミン類も失われるので、後の工程での高度な技術が要求されることになる。
精米の速度が速すぎると、米が熱をもって変質したり砕けたりするので、細心の注意をもってゆっくり行なわなくてはならない。吟醸、大吟醸となると、削りこむ部分が大きいだけでなく、そのぶん対象物が小さくなって神経も使うので、精米に要する時間は丸二日を超えることもある。
1930年(昭和5年)ごろ以降は
縦型精米機の出現により、より高度で迅速な精米作業が可能になり、ひいてはのちの吟醸酒の大量生産を可能にした(参照:
吟醸酒の誕生)。最近ではこの縦型精米機を
コンピュータで制御して精米している大メーカーもある。
放冷・枯らし [編集]
精米後の白米、分け後の酒母、出麹後の麹を次の工程で使用されるまで放置すること。
精米された米はかなりの
摩擦熱を帯びている。精米歩合が高く、精米時間が長ければ長いほど、帯びる熱量も大きくなる。そのままでは次の工程へ進むには米の質が安定していない(
杜氏や蔵人の言葉では「米がおちついていない」)ため、袋に入れて倉庫のなかでしばらく冷ますことになる。また、摩擦熱によって蒸発した水分を元に戻す。 これを
放冷(ほうれい)、また杜氏・蔵人の言葉では
枯らし(からし)という。「しばらく」と言っても数時間単位で済む作業ではなく、摩擦熱が放散しきって完全に米が落ち着くまで通常3週間から4週間はかかる。
洗米 [編集]
精米された米は、精米の過程で表面に付いた糠・米くずを徹底的に除去される。これが洗米(せんまい)である。
普通酒を造る米などは、機械で一度に大量に洗米される。他方、高級酒を造る米は、手作業でおよそ10キログラムぐらいずつ、5℃前後の冷水で、流れる水圧を利用して少しずつ洗われる。洗っている間にも米は必要な水分を吸収しはじめており、「第二の精米作業」と言われるほどに、細心の注意を払う工程である。こうして洗われた米は浸漬へ回される。
浸漬 [編集]
洗米された米は、水につけられ、水分を吸わされる。これを浸漬(しんせき、若しくはしんし)という。
浸漬は、のちのち蒸しあがった米にムラができないように、米の粒全般に水分を行き渡らせるために施される工程である。水が、米粒の外側から、中心部の
心白(
杜氏蔵人言葉では「目んたま」)と呼ばれる
デンプン質の多い部分へ浸透していくと、米粒が文字通り透き通ってくる。米の搗(つ)き方、その日の
天候、
気温、
湿度、
水温などさまざまな条件によって、浸漬に必要な時間は精緻に異なる。冬の厳寒のさなかの手仕事である。
このとき、米にどれだけ水を吸わせるかによって、できあがりの酒の味が著しく違ってくる。米の品種や、目指す酒質によって、浸漬時間も数分から数時間と幅広い。
精米歩合が高い米ほど、その違いが大きく結果を左右するので、高級酒の場合はストップウォッチを使って秒単位まで厳密に浸漬時間を管理する。米は水からあげた後もしばらく吸水しつづけるので、その時間も計算に入れた上で浸漬時間は判断される。
なお、できあがりの酒質のコンセプトによっては、意図的に途中で水から上げるなど、ある一定の時間だけ米に吸水させる。これを限定吸水(げんていきゅうすい)という。
蒸し [編集]
浸漬を経た米は広げて、湿度を保たせる。このあいだも米は水分を吸収し続ける。
その後、麹の酵素が米のデンプンを分解しやすくさせるために、米を蒸す。この工程を正式には
蒸きょう(じょうきょう:「きょう」は「食へんに強」)、もしくは杜氏蔵人言葉で
蒸しという。普通酒などでは自動蒸米機(じどうじょうまいき)という機械で、高級酒などでは和釜に載せた
甑(こしき)という大きな蒸籠(せいろ)に移して、約1時間ほど乾燥蒸気で蒸す。
蒸しあがった米は、「外硬内軟」といって、外側がパサパサとしていて内側が柔らかいのがよいとされている。外側が溶けていると、コウジカビの定着の前に腐敗が始まる恐れがあり、また、内側に芯が残っていると、米で一番良質のデンプン質を含んだ部分が、糖化・発酵しない可能性があるからである。
なお、和釜から甑を外すことを
甑倒し(こしきだおし)という。それは単に蒸しの作業が終わることだけでなく、杜氏や蔵人たちにとっては気の抜けない酒造りの
季節が終わり、ほっと一息つく日の到来をも意味する。
麹造り [編集]
麹とは、蒸した米に
麹菌というコウジカビの胞子をふりかけて育てたもので、米の
デンプン質を
ブドウ糖へ変える
糖化の働きをする(詳しくは
麹参照)。麹造りは正式には
製麹(せいぎく)という。
口噛み製法で醸されていた原初期の日本酒をのぞいて、
奈良時代の初めにはすでに麹を用いた製法が確立していたと考えられる。以来、永らく麹造りは、酒造りの工程に占める重要性と、味噌や醤油など他の食品への供給需要から、酒屋業とは別個の専門職として室町時代まで営まれてきたのだが、
1444年の
文安の麹騒動によって酒屋業の一部へと武力で吸収合併された(参照:
日本酒の歴史 - 室町時代)。
現在、たいてい酒蔵には
麹室(こうじむろ)と呼ばれる特別の部屋があり、そこで麹造りが行なわれている。床暖房や
エアコンなどで温度は30℃近く、湿度は60%以下に保たれている。温度が高いのは、そうしないと黄麹菌が培養されないからであり、また湿度に関しては、それ以上高いと黄麹菌以外のカビや雑菌が繁殖してしまうからである。入室には全身の消毒が必要で、関係者以外は入れない。それに加え、室外から雑菌が入り込まないように二重扉、密閉窓、断熱壁など、かなりの資本をかけて念入りに造られている。よく「麹室は酒蔵の財産」と言われる。
「
麹」の項に詳しく述べられているように、麹からは
糖化作用のための
デンプン分解酵素のほか、
タンパク質分解酵素なども出ており、これらが蒸し米を溶かし、なおかつ酒質や酒味を決めていく。あまり酵素が出すぎると目指す酒質にならないため、米の溶け具合がちょうどよいところで止まるように麹を造る必要がある。
破精込み具合 [編集]
それを見極めるのに着目されるのが、米のところどころに生じる
破精(はぜ)である。ちょうど植物が土中へ根を生やすように、
コウジカビが蒸米の中へ菌糸を伸ばしていくことを
破精込み(はぜこみ)といい、その態様を
破精込み具合(はぜこみぐあい)という。破精込み具合によって麹は次のように分類される。
- 突破精型(つきはぜがた)
- コウジカビの菌糸は蒸米の表面全体を覆うことなく、破精の部分とそうでない部分がはっきり分かれており、なおかつ菌糸は蒸米の内部奥深くへしっかり喰いこみ伸びている状態。強い糖化力と、適度なタンパク質分解力を持つ理想的な麹となり、淡麗で上品な酒質に仕上がるため、一般的な傾向としては吟醸酒によく使われる。
- 総破精型(そうはぜがた)
- コウジカビの菌糸が蒸米の表面全体を覆い、内部にも深く菌糸が喰いこんでいる状態。糖化力、タンパク質分解力ともに強いが、使用する量によっては味の多い酒になりやすい。濃醇でどっしりした酒質に仕上がるため一般に純米酒に好んで使われる。
- 塗り破精型(ぬりはぜがた)
- コウジカビの菌糸は蒸米の表面全体を覆っているが、内部には菌糸が深く喰いこんでいない状態。糖化力、タンパク質分解力ともに弱く、粕歩合が高く、力のない酒になりやすい。
- 馬鹿破精型(ばかはぜがた)
- 前の工程、蒸しの段階で手加減を間違えたため、蒸米がやわらかすぎて、表面にも内部にも菌糸が喰いこみすぎ、グチャグチャになった状態。こうなると雑菌に汚染されている危険もある。酒造りには通常使えない。
杜氏や蔵人のあいだではよく「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」と言われる。「よい麹ができれば酒は七割できたも同然」という杜氏や蔵人もいるくらいで、酒造りの根本として重要視される。
目安としては蒸し米30キログラムにつき約1坪のスペースが必要で、また
大吟醸酒などでは蒸し米100キログラム当たりに振りかける黄麹菌は5グラムほどである。
目指す酒質によって、麹造りには以下のような方法がある。
蓋麹法 [編集]
蓋麹法(ふたこうじほう)は、主に吟醸酒かそれ以上の高級酒のための方法であり、麹造りに要する時間は丸2日以上、だいたい50時間で、おおかた以下のような順番で作業がおこなわれる。
- 種切り まだ35℃近くの蒸し米を薄く敷き詰め、篩(ふるい)から種麹(たねこうじ)、すなわち粉状の黄麹菌を振りかけていく。終わると米を大きな饅頭のように中央に集めて布で包む。
- 切り返し 種切りから8 - 9時間経つと、黄麹菌の繁殖熱により水分が蒸発し米が固くなっているので、いったん広げて熱を放散させたうえで、ふたたび大きな饅頭にして包む。
- 盛り 翌日あたりになると黄麹菌の活動が盛んになり、米の温度も上昇がいちじるしい。そこで大きな饅頭を解き、小さな箱に米を少量ずつ小分けにしていき、この箱を決められたスペースに積み重ねて管理する。この小さな箱のことを麹蓋(こうじぶた)といい、麹蓋に米を盛りつけることからこの工程を盛りと呼ぶ。非吟醸系の酒の場合、麹蓋は使われないことも多い。
- 積み替え 盛りから3 - 4時間経つと、ふたたび米が熱を持ってくるので、麹蓋を上下に積み替えて温度を下げる。
- 仲仕事(なかしごと) ふたたび熱を散らすために米を広げて温度を下げる。
- 仕舞い仕事(しまいしごと) また熱を散らすため、米を広げる。これで米の熱を散らす作業は終わりという意味から仕舞い仕事と呼ぶのだが、実際上はこれが最後ではない。
- 最高積み替え 仕舞い仕事のあとも米の温度はさらに上がる。温度が最高になったときに、最後の温度調整のために麹蓋の上下積み替えをおこなう。温度が最高になったときに行なうので最高積み替えという。この後も何回か米の温度を見て、適宜に積み替えをして温度を下げる作業が続く。
- 出麹(でこうじ) 50時間ほど経過したころになると、栗を焼いたような香ばしい匂いがしてくる。これが麹ができたサインとなる。こうなったら麹室から麹を出す。
箱麹法 [編集]
箱麹法(はここうじほう)は、蓋麹法から「3. 盛り」以降を簡略化する手法で、普通酒を中心とした酒質に用いられる。
麹蓋を大きくしたような
麹箱をつかって米を小分けするが、大きい分だけ一度に処理できる米の量が増え、ひいては手間やコストの低減化につながる。
床麹法 [編集]
床麹法(とここうじほう)は、麹蓋や麹箱を用いずに、
麹床(こうじどこ)などと呼ばれる、米に黄麹を振りかける台で米の熱を放散させて造る方法である。普通酒を中心とした酒質に用いられる。
機械製麹法 [編集]
機械製麹法(きかいせいぎくほう)は、機械を用いて麹を大量生産できる方法。手間がかからず生産コストは抑えられるが、できる酒質には限界があるので、高級酒には適さないとされる。普通酒を中心とした酒質に用いられる。 最近では若い杜氏の小さな蔵での少量高品質の酒用への取り組みが注目されている。人の手が入ることによる雑菌混入が引き起こす酸度の予期せぬ上昇を押さるというメリットがあり、少ない人員でより効率的に麹の生育状況を厳密に管理できることに加え、同時にデータの収集・蓄積も出来るという今まで経験頼りでムラのある作業ではない、正確無比な狙い通りの麹が造れることから積極的に小規模な機械製麹機によるプレミアム日本酒造りが行われている。
酒母造り [編集]
酵母を増やす行程のこと。
杜氏・蔵人言葉では「
酛立て」(もとだて)という。
酵母には
ブドウ糖を
アルコールに変える働き、すなわち
発酵作用があるものの、酒蔵で扱うような大量の米を発酵させるためには、微生物である酵母が一匹や二匹ではまったく不十分で、米の量に見合っただけの何百億、何千億匹もの酵母が必要となる。だが、実際の酵母の数を数える単位は匹ではなく
cellという。
こうした状況のなかで酒蔵では、アンプルに入っている少量の
協会系酵母を特定の環境で大量に育てることになる。このように大量に培養されたものを
酒母(しゅぼ / もと)または
酛(もと)という。
作業としては、まず
酛桶(もとおけ)と呼ばれる高さ1mほどの桶もしくはタンクに、麹と冷たい水を入れ、それらをよく混ぜる。すると
水麹(みずこうじ)と呼ばれる状態のものができあがる。酛桶は、最近では高品質の
ステンレス鋼のものが多く、どうみても「タンク」といった風体だが、醸造器としてはあくまでも「酛桶」という。
そのあと水麹に
醸造用乳酸と、採用すると決めた酵母を少量だけ入れる。採用する酵母は、多種多様な
清酒酵母から、造り手が目指す酒質に適すると考えるものが通常は一種類だけ選ばれるが、その酵母があまりにも強い特性を持つ場合などには、それを緩和するためにもう一種類の酵母をブレンドして入れることも多い。
上記のものに蒸し米を加えると酒母造りの仕込みは完成する。あとは製法によって2週間から1ヶ月待つと、仕込まれた桶のなかで酵母が大量に培養され酒母すなわち酛の完成となる。
酒母造りの場所は、
酒母室(しゅぼしつ)もしくは
酛場(もとば)と呼ばれ、
雑菌や
野生酵母が入り込まないように室温は5℃ぐらいに保たれている。しかし麹室に比べると管理の厳重さを必要としないので、酒蔵によっては見学者を入れてくれるところもある。酒母室のなかでは、酵母が発酵する小さな独特の音が響いている。
酒母造りの際には、タンクの蓋は開け放しの状態になるから、空気中からタンク内にたくさんの
雑菌や
野生酵母が容易に入り込んでくる。そのため
硝酸還元菌や
乳酸菌を加え、乳酸を生成させることによって雑菌や野生酵母を死滅させ駆逐することが必要となる。この乳酸を、どのように加えるかによって、酒母造りは大きく
生酛系(きもとけい)と
速醸系(そくじょうけい)の2つに分類される。
生酛系 [編集]
生酛系(きもとけい)の酒母造りは現在大きく
生酛(きもと)と
山廃酛(やまはいもと)に分けられる。
生酛 [編集]
生酛(きもと)とは、現在でも用いられる中で最も古くから続く製法で、
乳酸菌を空気中から取り込んで乳酸を作らせ、雑菌や野生酵母を駆逐するものである。酒母になるまでの所要期間は約1ヶ月。所要期間が長いのは、工程が多く手間がかかるのと、醗酵段階も
完全醗酵させるからである。現在でも時間や労力がかかるので敬遠される傾向にあるが、成功すればしっかりとした酒質となるため、伝統の復活のために取り組んでいる酒蔵も増えてきている。主な工程は以下の通り。
米、麹、水を桶(タンク)に投入 > 山卸 > 温度管理 > 酵母添加 > 温度管理 > 酒母完成
山廃酛 [編集]
山廃酛(やまはいもと)とは、生酛系に属する仕込み方の一つで
山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)の略である。この方法で醸造した酒のことを
山廃仕込み(やまはいしこみ / -じこみ)あるいは単に
山廃(やまはい)という。おおざっぱに言えば、
生酛造りの工程から
山卸を除いたものとなるが、単に山卸を省略したものではなく、関連するその他の細部の作業もいろいろ異なる。「山卸」とは米と麹と水を櫂で混ぜる作業のことで「酛すり」ともいう。詳しくは「
山廃仕込み」「
生酛・山廃・速醸酛の関係」参照。
速醸系 [編集]
速醸系(そくじょうけい)では、
乳酸を人工的にあらかじめ加える、近代的な製法。明治43年(
1910年)に考案された。仕込み水に醸造用の乳酸を加え、じゅうぶんに混ぜ合わせた上で、掛け米と麹を投入して行なわれる。
速醸酛(そくじょうもと)とも呼ばれる。所要期間は約2週間。現在造られている日本酒のほとんどは、速醸系である。工程は以下の通り。
米、麹、水、乳酸を混ぜる > 酵母添加 > 温度管理 > 酒母完成
醪造り [編集]
醪(もろみ)とは、仕込みに用いるタンクのなかで酒母、麹、蒸米が一体化した、白く濁って泡立ちのある粘度の高い液体のことであるが、学問的・専門的にではなく、あくまでも一般的理解のためという前提で補足すると、日本酒の製法という文脈に限っては、
- 「醪(もろみ)」=「仕込み」=「造り」
としてほぼ同意に使われることが多い。
したがってこの醪造りも、単に「造り」と呼ばれる。「一に麹、二に酛、三に造り」というときの「造り」はこれを意味している。またこの造りをおこなう場所を
仕込み場(しこみば)という。現在の仕込み場は、たいてい温度センサーのとりつけられた
3t仕込みタンクが並んでいる。
醪造りの工程においては、酵母のはたらきでもろみがアルコールを生成すると同時に、麹によってデンプンが糖に変わる。この同時並行的な変化が日本酒に特徴的な
並行複発酵である。
この方法により酵母が活性を失わずに発酵を進めるため、醪造りの最後にはアルコール度数20度を超えるアルコールが生成される。これは
醸造酒としては稀に見る高いアルコール度数であり、日本酒ならではの特異な方法で、世界に誇れる技術的遺産といえる。
1回目を
初添(はつぞえ 略称「添」)、
踊りと呼ばれる中一日を空けて、2回目を
仲添(なかぞえ 略称「仲」)、3回目を
留添(とめぞえ 略称「留」)という。20 - 30日かけて発酵させる。
吟醸系(
吟醸酒・
大吟醸酒)と非吟醸系(それ以外の酒)は、この過程において以下の二つの点で造り方が分かれる。
- 精米歩合
- 精米は、米に含まれる蛋白質を取り除くために行われるが、生物の構成において蛋白質が重要である以上、精米歩合の高い麹米・掛米から造られた醪は、酵母が生きていくにはよい環境ではない。そのため、酵母はその環境で生存するために、それら自身がアミノ酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸を生成する。これらの中で、揮発性のものが独特の吟醸香を構成する。米が削り込んであればあるほど、酵母は苦しんで、吟醸香を出す。
- 温度管理
- 酵母がブドウ糖からエネルギーを得るためにも、また酵母が自身にとって快適な生存環境を構築するためにも、熱が放出される。しかし、その熱は醪の中の化学成分、特に有機酸に影響を与えて、雑味となる成分を生成してしまう。また生物は、主な構成物質が蛋白質であるために、その大半は蛋白質の凝固温度の手前である35℃前後が活動に適した温度である。雑味を抑えるためには、発酵熱が放出されてもなお35℃を下回らなければならない。そのために、日本酒造りは冬の寒い時期に行われることになった。通常の造りは15℃前後に熱を抑えるのに対し、さらに有機酸への影響を多く考えなくてはならない吟醸系の場合は10℃前後が目安とされる。
泡の状貌 [編集]
温度計もセンサーもなかった時代から、杜氏や蔵人たちは
醪(もろみ)の表面の泡立ちの様子を観察し、いくつかの段階に区分けすることによって、内部の発酵の進行状況を把握してきた。この醪の表面の泡立ちの状態を
(泡の)状貌(じょうぼう)といい、以下のように示される。
- 筋泡(すじあわ) 留添から2 - 3日ほど経つと生じてくる筋のような泡で、醪の内部での発酵の始まりを告げる。
- 水泡(みずあわ) 筋泡からさらに2日ほど経ったころ。カニが口から吹くような白い泡。醪の中の糖分は頂点に達している。
- 岩泡(いわあわ) 水泡からさらに2日ほど経ったころ。岩のような形となる泡。発酵にともなって放熱されるので温度上昇も著しいころである。
- 高泡(たかあわ) 岩泡からさらに2日ほど経ったころ。留添から通算すると1週間から10日前後。岩泡全体が盛り上がりを見せる。化学的には発酵が糖化に追いつこうとしている状態。泡あり酵母と泡なし酵母の区別は、この高泡の有無で決められることが多い。
- 落泡(おちあわ) 留添から12日前後経ったころ。泡の盛り上がりが落ち着いてくる。化学的には発酵が糖化に追いついた状態。
- 玉泡(たまあわ) さらに2日ほど、また留添から通算で2週間ほど経ったころ。詳しくは大玉泡→中玉泡→小玉泡に分けられる。泡は玉のかたちになってどんどん小さくなっていく。小さければ小さいほど発酵はだいぶ落ち着いてきている。
- 地(じ) さらに5日ほど、または留添から通算3週間近く経ったころ。玉泡が小さくなりきって、今度は消えていく。発酵も終盤に近いことを示す。だが、どの段階で「醪造り」の全工程の終了とみなすかは、杜氏の判断に任されている。目的とする酒質によっては、このまま何日か時間を置いたほうがよく、また吟醸系の場合はさらにその状態を持続させることが好ましいとされるからである。
近年、
泡なし酵母が多く開発されてきたが、今日でも
泡あり酵母を使った醸造では、仕込みタンクのなかで日々刻々と上記のような状貌の推移を見ることができる。
アルコール添加 [編集]
上槽の約2日前から2時間前にかけて、ゆっくりと丹念に30%程度に薄めた
醸造アルコールを添加していくこと。
「アルコール添加」または略して「アル添(アルてん)」という語感から、工業的に何か不純な添加物を加えるかのようなイメージをもたれることが多い(参照:当記事内『
美味しんぼ』)が、古くは江戸時代の
柱焼酎という技法にさかのぼる、伝統的な工程のひとつである。次のような目的がある。
- 防腐効果 現在のアルコール添加の起源となっている、江戸時代の柱焼酎は、酒の腐造を防ぐために焼酎を加える技法であった。かつては防腐効果がアルコール添加の最も重要な目的であった。衛生管理が進んだ現代では、こうした意味合いは薄れてきている。
- 香味の調整 現在のアルコール添加の目的の第一はこれである。適切なアルコール添加は、醪からあがった原酒に潜在している香りを引き出す。特に吟醸系の酒の香味成分は、水には溶けないものが多く、それを溶かしだすためにアルコール添加が必要となる。そもそも吟醸酒自体が、アルコール添加を前提として開発された酒種であった(参照:日本酒の歴史#吟醸酒の誕生)。現在、吟醸酒を生産する酒蔵ではアルコール添加は酒質を高めるために必須と考えているところが多い。
- 味の軽快化 現在のアルコール添加の目的の第二。醪(もろみ)の中には発酵の過程で生成された糖や酸が多く含まれており、これらを放置しておくと、完成した酒が、良く言えば重厚、悪く言えば鈍重な味わいになる。ここでアルコール添加をおこなっておくと、それらが調整される。また純米酒はその性質上、多かれ少なかれ酸味が飲んだ後に残る。アルコール添加により酸味が抑えられ、飲み口がまろやかになる。さらに、現代の食生活では旨み・油が多用され、飲料としては軽快な味わいのものが求められるようになってきたために、酒の切れ味を良くするためにアルコール添加が活用されている側面もある。
- 増量 三増酒の全盛時代には、酒の量を水増しするために行なわれたことが多かった。「アル添」という工程が一般的に悪いイメージを持たれるのには、主にそうした前の時代の負の遺産であると言い訳されることもあるが、実際に「アル添」されたものは臭みが増すとの声もある。「香味の調整」や「味の軽快化」などは建前であって「増量」こそが本当の目的の場合もある。増量目的と言えばイメージが悪いので、そうは言えないのである。
上槽 [編集]
上槽(じょうそう)とは、
醪(もろみ)から生酒(なまざけ)を搾る工程である。
杜氏の判断で「熟成した」と判断された
醪へ、
アルコール添加や
副原料が投入され、これを搾って、白米・米麹などの固形分と、生酒となる液体分とに分離する。杜氏蔵人言葉では
搾り(しぼり)、
上槽(あげふね)ともいう。
なお、固形分がいわゆる
酒粕(さけかす)になる。原材料白米に対する酒粕の割合を、
粕歩合(かすぶあい)という。
上槽をおこなう場所を
上槽場(じょうそうば)といい、
普通酒、
本醸造酒、
純米酒は、そこで醪自動圧搾機(もろみじどうあっさくき)や遠心分離機(えんしんぶんりき)などの機械で搾られる。
吟醸酒のように丁寧な作業を要する酒は、昔ながらの
槽搾り(ふねしぼり)、
ヤブタ搾り、
袋吊りなどの方法で搾られる。それは単に手造り感を演出しているわけではなく、吟醸酒の醪には溶解していない米が他種の酒よりも多く残る結果となるので、機械で搾ろうとしても酒粕が詰まってしまうからである。
搾りだされた酒が出てくるところを槽口(ふなくち)という。
また酒蔵では、その年初めての酒が上槽されると、軒下に
杉玉(すぎたま)もしくは
酒林(さかばやし)を吊るし、新酒ができたことを知らせる習わしがある。吊るしたばかりの杉玉は蒼々としているが、やがて枯れて茶色がかってくる。この色の変化がまた、その酒蔵の新酒の
熟成具合を人々に知らせる役割をしている。
滓下げ [編集]
滓下げ(おりさげ)とは、上槽を終えた酒の濁りを取り除くために、待つことを指す。槽口(ふなくち)から搾り出されたばかりの酒は、まだ炭酸ガスを含むものも多く、
酵母・デンプンの粒子・蛋白質・多糖類などが漂い、濁った黄金色をしている。この濁りの成分を
滓(おり)といい、これらを
沈澱させるため、酒はしばらくタンクのなかで放置される。滓下げによる効果は、単に濁りをとることに留まらず、余分な蛋白質を除去することで、瓶詰後の温度変化や経時変化によって引き起こされる蛋白変性での濁りの予防や、後工程となる濾過の負担軽減へも影響を及ぼす。
滓下げを施した上澄みの部分を「生酒」(なましゅ)という。「生酒」(なまざけ)とは別の概念なので注意を要する。
完成酒を生酒(なまざけ)や
無濾過酒(むろかしゅ)に仕立てる場合などは異なるが、大多数の一般的な酒の場合、上槽から出荷までには二度ほど滓下げを施すことが多い。第一回目の滓下げをおこなったあとの生酒(なましゅ)にも、まだ酵母やデンプン粒子などの滓が残っているのがふつうで、雑味もかなりあり、これらを漉し取るために
濾過(ろか)の工程が必要となってくる。
近年では、消費者の「生」志向に乗じて、滓下げ以降の工程を施さず無濾過生原酒として出荷する酒蔵もあらわれてきている。
濾過 [編集]
濾過(ろか)とは、滓下げの施された
生酒(なましゅ)の中にまだ残っている細かい滓(おり)や雑味を取り除くことである。液体の色を、黄金色から無色透明にできるだけ近づける目的もある。なお、この工程をあえて省略して、
無濾過酒(むろかしゅ)として出荷する場合も多い。
- 活性炭濾過 生酒(なましゅ)の中に、粉末状の活性炭を投入して行なわれる濾過を炭素濾過(たんそろか)もしくは活性炭濾過(かっせいたんろか)ともいう。この活性炭粉末を、酒蔵では単に炭(すみ)と呼ぶ。基本的には一般家庭の冷蔵庫などで使われる脱臭炭や、煙草のフィルターに入っている黒い粉末と同じものである。目安として、生酒(なましゅ)1キロリットルにつき炭1キログラムを投入し、取り除きたい成分や色をその炭に吸着させて沈澱させる。その後に不要成分ごと炭を脱去する。活性炭を投入するといっても、単に投げ入れるだけではなく、取り除きたい成分や色だけを抜くところにこの工程の難しさがある。あまり入れすぎると酒は澄んでくるが、味も色も香りもすべて無化して面白くも何ともない完成酒になってしまう。じつは高級酒ほど炭の使用量は少なく、根強いファン層を持つ銘酒では0.06キログラム程度であるともされる。このように、炭加減(すみかげん)がたいへん微妙であることから、地酒の本場では蔵人のあいだで炭屋(すみや)と呼ばれる、この工程だけの専門家が多く存在したが、活性炭濾過そのものが過去の手法になりつつあり、現在では活性炭の使用量、使用の有無、炭屋なる専門職は減少傾向にある。また活性炭を使用してから他の方法で濾過する場合も多いので、「活性炭の使用」の有無と「濾過」の有無は、まったく別の次元の話である。
- 珪藻土濾過 精製された珪藻土の層を用いた濾過を行い、夾雑物を、そして活性炭濾過を行なったあとであれば活性炭そのものを取り除く。珪藻土とは珪藻類の化石で、非常に小さな孔を多数持つ形状をしており、色の元となる物質、雑味物質、香り物質もある程度除去する。この濾過技術の進歩は、活性炭の使用が減少している一助ともなっている。
- 濾紙による濾過 特殊な濾紙を用いて濾過をする場合もある。
- フィルター濾過 最近とみに増加してきた。カートリッジ式のフィルターを用いて濾過する方法。カートリッジ式なので取替えが可能で、手軽さがメリットである。とくに生酒(なまざけ)として出荷する場合は、火落ち菌対策として、火入れをしないことから、高精度な(0.22 - 0.65μ程度の)除菌のための濾過をこれによっておこなう。
槽口(ふなくち)から搾られたばかりの日本酒は、たいてい秋の稲穂のように美しい
黄金色をしている。かつての
全国新酒鑑評会では、酒に色がついた
出品酒を減点対象にしていた時代があった。いきおい、酒蔵はどこも懸命に活性炭濾過で色を抜き、水のような無色透明の状態にして出荷することが多かった。
いわゆる「清酒」という言葉から一般的に連想される無色透明な色調は、そのような時代の名残りともいえる。現在では、雑味や雑香はともかく色の抜去は求められなくなってきたので、色のついたまま流通する酒が復活し、むしろ自然な色のついた酒の素朴さを好む消費者も増えてきている。
このような流れのなかで、濾過のあり方も今後どうなるか注目されている。[要出典]火入れ [編集]
火入れ(ひいれ)とは、醸造した酒を加熱して殺菌処理を施すこと。
火当て(ひあて)ともいう。火入れされる前の酒は、まだ中に
酵母が生きて活動している。また、
麹により生成された
酵素もその活性を保っているため酒質が変化しやすい。また、
乳酸菌の一種である
火落菌が混入している恐れもある。これを放置すると酒が白く濁ってしまう(火落ち)。
そこで火入れにより、これら酵母・酵素・火落菌を殺菌あるいは失活させて酒質を安定させる。これにより酒は常温においても長期間の貯蔵が可能になる。しかし、あまり加熱が過ぎれば、アルコール分や揮発性の香気成分が蒸発して飛んでしまい酒質を損なう。そのため、これも加減が難しい。
現在は通常は62℃ - 68℃程度で行なわれる。[要出典]明治時代に来日したイギリス人
アトキンソンは、
1881年に各地の酒屋を視察、「酒の表面に“の”の字がやっと書ける」程度が適温(約130°
F(55℃))であるとして、温度計のない環境で寸分違わぬ温度管理を行っている様子を観察し、驚きをもって記している。
火入れと「生酒」の関係 [編集]
火入れをしていない酒は「生酒」「
無濾過生原酒」などとして人気がある。そういう「生」系の酒はみずみずしく、香りも若やいで華やかであり、また残存する微発泡感はのど越しもよい。 火入れをするとそれらの
酒の繊細さが失われるため、保存管理さえ徹底されていれば「生酒」には火入れした酒にはない味わいがある。
しかし従来は低温での保存、流通を管理するのは難しく「生酒」が市場に出るのはまれだったが、保存管理が行き届くようになった近年「生酒」が市場に出回るようになり、日本酒の中で「生酒」が新しい楽しみ方のひとつとなっている。
ただし、日本酒は火入れをしなければ劣化が早く、すぐに
生老ね香を発するため、生酒はとくに正しい保存管理をしなければならない。
また「生」系の酒の味は荒々しく、
貯蔵・熟成を経た酒が持つ旨みやまろみ、深みに欠けるため、従来通りの火入れの工程を経た酒も日本酒としての魅力を失うわけではない。
「生酒」をめぐる表示問題 [編集]
生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)や生詰酒(なまづめしゅ)に仕立てる場合などをのぞいて、大多数の一般的な酒の場合、上槽から出荷までのあいだに火入れは二度ほど行なわれる。すなわち、1回目は貯蔵して熟成させる前、1回目は瓶詰めして出荷する直前である。とくに1回目の火入れは、成分に落ち着きを与え、その先の貯蔵中にどういうふうに熟成していくかの方向性を左右する。これをわかりやすくチャートにすると以下のようになる。
上槽 → 滓下げ1回目 → 濾過1回目 → 火入れ1回目 →貯蔵・熟成 → 滓下げ2回目 → 濾過2回目→割水→火入れ2回目 → 瓶詰め → 出荷
- 生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ) 火入れ1回目をしない。杜氏蔵人言葉では「先生」(さきなま)、「生貯」(なまちょ)などという。
- 生詰酒(なまづめしゅ) 火入れ2回目をしない。杜氏蔵人言葉では「後生」(あとなま)などという。
- 生酒(なまざけ) 火入れ1回目も2回目もしない。杜氏蔵人言葉では「生生」(なまなま)、「本生」(ほんなま)などという。
- 原酒(げんしゅ) 滓下げ1回目を施された上澄み部分の酒のこと。
以上のような前提の中で、生貯蔵酒や生詰酒は、少なくとも1回は火入れをしていて本当は「生」ではないわけだから、「生」を名称に含めるのは妥当ではない、という議論がなされている。
また、「生」好みの消費者心理を利用し、生貯蔵酒や生詰酒の「生」の字だけを大きく、あるいは目立つ色彩でラベルに印刷し、その他の文字を小さく地味に添えるなどして、あたかも生貯蔵酒や生詰酒が「生」の酒であるかのようにイメージを演出して流通させている蔵元もある。一方では、吟醸酒や純米酒のなかには「生詰」と表示しているだけでも、ほんとうの生酒(なまざけ)、言うならば「生生」も流通されるようになってきた。
貯蔵・熟成 [編集]
熟成の概要 [編集]
熟成(じゅくせい)とは、貯蔵されている間に進行する、酒質の成長や完成への過程をいう。
上槽や
滓下げのあと、
無濾過や
生酒として出荷するために、
濾過や
火入れを経ないものもあるが、そうでない製成酒は通常それらの工程を経た後に、さらに酒の旨み、まろみ、味の深みなどを引き出すためにしばらく
貯蔵(ちょぞう)される。
吟醸系の酒は、香りや味わいを安定させるために、半年かそれ以上、熟成の期間を持たせるものも多い。しかし、いちいち
古酒、
古々酒といった表示をするのは、吟醸の品格からして無粋であるというような感覚から、そういった表示はラベルにされないのが通常である。
非吟醸系であっても、
本醸造酒や
純米酒では、酒蔵のある風土の自然条件、
仕込み水の特徴、
杜氏が目的とするコンセプトなどさまざまな理由から、長期間貯蔵して熟成させるものがある。
熟成のメカニズム [編集]
火入れを経過させない酒においては発酵が止まっておらず、
調熟作用(ちょうじゅくさよう)といって、
アミノ酸分解や
糖化により風味の自然調和が続いている。そのため、調熟作用によって最終的にその酒の持ち味を生み出している銘柄では、すぐに出荷せず貯蔵・熟成させるのは、欠かすことのできない工程の一部である。一般的に
完全醗酵させた
純米酒は熟成がゆっくりと進み、劣化しにくい。
不完全醗酵の製成酒は、アルコールに分解されていない成分が多く含まれるため、酒質の変化は早いが劣化しやすいと言われている。
熟成の原因は、大きく分けて外部から加わる熱や
酸素になどによる
物理的要因と、内部で起こるアミノ酸を初めとする
窒素酸化物や
アルデヒドなどによる
化学的原因とに分かれるが、具体的な理論に関しては未解明な部分が多い。たとえば、廃坑や廃線になったトンネルなど或る特定の場所で貯蔵すると、いくら温度や湿度など科学的に条件を同じにしても、他の場所で貯蔵するよりもあきらかに味がまろやかになる、といった例は多い。
福岡銘酒会に加盟する16場の酒蔵が共同で使用している
旧国鉄黒木町(くろぎまち)トンネルなどが一例である。そのトンネル内の何が、好ましい熟成に作用しているのかは未だ解明されていない。
日本酒の賞味期限の問題 [編集]
日本酒は、
牛乳などと同じく、新鮮さが命であるため、
生酒はもちろんのこと、そうではない
火入れをしてある酒であっても、原則的には出荷後はできるだけ早く飲んだほうがよい、と一般に言われている。
生新酒では、搾りの日から三週間迄の間が一番生新酒のフレッシュな味を楽しめるので、心ある酒販店や蔵元ではその三週間以内にお届けするところもある。ただ生新酒は直ぐに劣化が始まるため、この期間を逃した場合は成熟の味が劣化を上回るまで待つ必要があり、酒によるが冷蔵庫で6ヶ月前後待つと素晴らしい姿になっている場合もある。
食との相互補完 [編集]
滋賀県の
鮒寿司のように、その地方の基本的食品がある一定の期間の貯蔵・熟成を経てから食べられる土地などにおいては、食品が熟成する時間と同じだけの時間が、酒質の完成にももとよりかかるように醸造される酒もある。つまり食と酒を同じ時期に仕込み、同じ年月を隔てて同時に食べるわけである。こういった熟成は、まさに
食文化の基礎にある
相互補完という地酒の原点を物語るものである。
新酒・古酒・秘蔵酒 [編集]
日本酒は、毎年7月から翌年6月が
製造年度と定められており、通常は製造年度内に出荷されたものが
新酒と呼ばれる。 しかし最近は、上槽した年の秋を待たず6月より前に出荷する酒に「新酒」というラベルを貼って、
ひやおろしから差別化して新鮮さをアピールする酒が増えたために、「新酒」の定義に混乱が生じつつある。
なお、蔵元のなかには西洋のワインにおける
ヴィンテージという考え方を導入し、ラベルに酒の製造年度を明記しているところもある。熟成することによって味に奥行きが出るように造るこうしたヴィンテージ系日本酒は、熟成期間の長いものでは20 - 30年にも及ぶ。
ひやおろし [編集]
ひやおろしとは、冬季に醸造したあと春から夏にかけて涼しい酒蔵で
貯蔵・熟成させ、気温の下がる秋に瓶詰めして出荷する酒のことである。その際、火入れをしない(冷えたままで卸す)ことから、この名称ができた。
醸造年度を越して出荷されるという意味では、ほんらい
古酒に区分されることになるが、慣行的に
新酒の一種として扱われる。
大古酒 [編集]
大古酒(だいこしゅ / おおこしゅ)という語に関して、現在のところ明確には定義されていない。しかし概して「大」が付くにふさわしい、桁違いの熟成が求められる。
1968年(昭和43年)に開封された
元禄の大古酒のように279年まで行かなくとも、熟成期間100年を超した年代ものは一般に大古酒と呼ばれる。
割水 [編集]
割水(わりみず)とは、
熟成のための貯蔵タンクから出された酒へ、出荷の直前に水を、より正確には
加水調整用水を加える作業をいう。
加水調整(かすいちょうせい)あるいは単に
加水とも呼ばれる。ちなみに
焼酎の製造過程では、まったく同じ工程を
和水(わすい)と呼んでいる。
この工程の目的は、酒のアルコール度数を下げることにある。
醪(もろみ)ができた直後には、ほとんどの酒が
並行複発酵により20度近い
アルコール度数となっている。アルコール度数の高いほうが腐敗の危険が少ないので、貯蔵・熟成もこの20度近いアルコール度のまま行なわれる。出荷するときには
酒税法の規定との兼ね合いもあり、また消費者が低アルコール度を好むという事情もあって、目的とするアルコール度数まで下げる必要がある。(「
低濃度酒」参照。)
いっぽう、割水をしないで、醪ができた時点のアルコール度のまま出荷した酒のことを原酒(げんしゅ)という(ただし、アルコール度数の変化が1%未満の加水は認められている)。 原酒というと、一般的にはその酒の元となった醪や酵母を使った本源的な酒、あるいは何かどろっとした濃いエキスのような酒がイメージされるようであるが、実際はそういうものではない。ただ、割水をしていない分、一般酒よりもアルコール度数が高めであることは確かである。
瓶詰め・出荷 [編集]
こうして割水など最後の調整を果たした酒は、
洗瓶用水で洗浄された瓶の中へ
瓶詰め(びんづめ)され、
出荷され、各自の蔵元がそれぞれ独自に切り拓いている
流通販路に乗る。
製法の用語・表現 [編集]
現在は使われていない、歴史上の製法にかかわる表現を含む。
「歩合」 [編集]
「 - 歩合(ぶあい)」で終わる用語には、次のものがある。
「仕込み」「造り」 [編集]
学問的・専門的にではなく、あくまでも一般的な理解のためという前提で補足すると、日本酒の製法という文脈に限っては、
というように、ほぼ同義語として考えてよい。どちらが呼称として一般的であるかは、その時代の趨勢と、造り手の意図によるところが大きい。
「 - 仕込み」または「 - 造り」で終わる用語には、次のものがある。
「酛」「酒母」 [編集]
学問的・専門的にではなく、あくまでも一般的な理解のためという前提で補足すると、日本酒の製法という文脈に限っては、
はほぼ同義語として考えてよい。
「 - 酛」または「 - 酒母」で終わる用語には、次のものがある。
- 菩提酛(ぼだいもと)
- 煮酛(にもと)
- 高温糖化酛(こうおんとうかもと)または「高温糖化酒母」
- 速醸酛(そくじょうもと)
- 中温速醸酛(ちゅうおんそくじょうもと) または 「中温速醸酒母」
- 山廃酛(やまはいもと)または「山卸廃止酛」
- 生酛(きもと)
その他 [編集]
以上の分類にあてはまらない用語には、次のものがある。
特定名称分類 [編集]
現在の清酒の分類において、もっとも重要なのは特定名称である。原料や製法が一定の基準を満たす清酒は、
純米酒(じゅんまいしゅ)、
吟醸酒(ぎんじょうしゅ)、
本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)といった
特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)に分類される。特定名称酒に該当しない清酒は、
普通酒(ふつうしゅ)と呼ばれる。
ただし、平成16年(2004年)1月1日から精米歩合規定が撤廃されたため、下記に示す条件に合わない場合でも記載は可能となっているのが現状であるため、名称はあくまで目安に過ぎない。(詳しくは「
純米酒」の項を参照。)
特定名称以外にも、特徴的な原料や製法によって様々な分類があるが、これらは
国税庁の告示である
清酒の製法品質表示基準により定められるものと、酒造メーカーや業界団体によって伝統的・慣用的に用いられるものとがある。
前者においては、特定名称といくつかの記載事項・
任意記載事項・記載禁止事項が定められている。後者においては、付加価値を高めるため前者において定義されていない多様な分類が見られるが、同意の分類でも地方や世代などによって異なる用語が用いられることがあり(中取り / 中汲み 等)、統一されていない。
特定名称の使用が定められる以前は、特級、一級、二級という
級別制度が存在した(詳しくは
日本酒の歴史を参照)。
なお、酒造メーカー独自のランク付けとして、特撰、上撰、佳撰などという呼称も一部で使われている。
普通酒 [編集]
特定名称酒以外の清酒。一般に流通している大部分の日本酒である。
白米、
米麹(こめこうじ)以外にも、
醸造アルコール、糖類、酸味料、
うま味調味料、
酒粕(さけかす)などの
副原料を加えて作ることが、副原料の重量が米・米麹の重量を超えない範囲という条件つきで認められている。
三倍増醸清酒、またはそれをブレンドした酒も普通酒に含まれる。
特定名称酒 [編集]
三等米以上の白米を用い、白米の重量に対する米麹の使用割合が15%以上の清酒。原料や精米歩合により本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)・純米酒(じゅんまいしゅ)・吟醸酒(ぎんじょうしゅ)に分類される。
本醸造酒 [編集]
精米歩合70%以下の白米、米麹および水と醸造アルコールで造った清酒で、香味及び色沢が良好なもの。使用する白米1トンにつき120リットル(重量比でおよそ1/10)以下のアルコール添加(アル添)をしてよいことになっている。そのままではアルコール度数が高いので水で割ってあることが多い(
割水)。そのため、旨味や甘味にとぼしく、一般的に味は軽くなり、すっきりしたものとなる。
純米酒 [編集]
白米、米麹および水だけを原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの。
ただし、その「白米」は、3等以上に格付けた玄米又はこれに相当する玄米を使用し、さらに「米麹」の総重量は、白米の総重量に対して15%以上必要である。
一般に吟醸酒や本醸造に比べて濃厚な味わいであり、蔵ごとの個性が強いといわれる。
歴史的にはもともと日本酒は昭和初期まですべて純米酒であった。アルコール添加の原型と見なされる
柱焼酎でさえも、原料は米だったからである。それが太平洋戦争前後の米不足から、増量目的のアルコール添加による
三倍増醸清酒が出回り、かたわらではそのアルコール添加を善用しようと吟醸酒が開発された。
こうして純米酒以外の日本酒が主流を占める時代が長く続いたが、近年では「米だけで造ってある酒」という、もとは当たり前だった前提がかえって新鮮なイメージを呼び、純米酒は日本酒のなかに一つのカテゴリーを形成しつつある。
また純米酒に関わる規定として、
1991年に
日本酒級別制度が廃止されて以降、
2003年(平成15年)12月31日まで、「精米歩合が70%以下のもの」という項目があり、「純米酒」という名称に品格を持たせるために、精米歩合を法的に規制していた。なぜならば、当時は精米歩合が高ければ高いほど高級酒になるという一般通念があったからである。
しかし近年の
規制緩和の一環として、この規定は
2004年(平成16年)1月1日以降削除され、米だけで造ってあれば、たとえ普通酒なみの精米歩合であっても純米酒の名称を認め、評価は
消費者の選択に任せるようになった。これに対しては、「消費者権利の拡大」と賛同的に取る立場と、「酒造技術の低下を招くもの」と批判的に取る立場がある。
この規制緩和によって、アルコール添加をしていなくても、
米粉などを使用していたために純米酒を名乗れなかった銘柄が、数多く純米酒に格上げされる形になるのではないかという疑念があるが、実際は上記にあるように「麹歩合15%以上」「規格米使用」といった縛りがあり、麹歩合15%未満の酒、規格外米・屑米・米粉を使用した酒は純米酒を名乗れないようになっている。一方では上記の条件を満たした上で、かつて普通酒にも用いられなかったような精米歩合の低い酒米をあえて原料とすることで、独特の酒質を引き出す
低精白酒などの新しい純米酒の開発も産んだ。
吟醸酒・純米吟醸酒 [編集]
精米歩合60%以下の白米、米麹および水を原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの。低温で長時間かけて発酵させて造る。吟醸香と呼ばれる、
リンゴや
バナナを思わせる華やかな香りを特徴とする。最後に吟醸香を引き出すために使用する白米1トンにつき120リットル(重量比でおよそ1/10)以下の醸造アルコールを添加する。
吟醸酒のうち、醸造用アルコールを添加していないものを特に純米吟醸酒と言う。一般に、他の吟醸酒に比べて穏やかな香り(控えめな香り)となる。
本記事を含めて、よく「吟醸系(の酒)」と表現される場合は、これら吟醸酒・純米吟醸酒・大吟醸酒・純米大吟醸酒・山廃吟醸酒など、吟醸香を持つ酒すべてをグループ化して意味している。
1920年代から開発が着手され、
1930年代の精米技術の向上と、
1970年代の温度管理技術の進歩に促されて、しだいに一般市場に出回るだけの生産量が確保できるようになった。吟醸酒が日本国内の市場に流通するようになったのは
1980年代以降であり、2000年代以降では日本国外でも需要が高まっている(参照:
「吟醸酒の誕生」)。
大吟醸酒・純米大吟醸酒 [編集]
大吟醸酒とは精米歩合50%以下の白米、米麹および水を原料とし、吟味して製造した清酒で、吟醸酒よりさらに徹底して低温長期発酵する。固有の香味及び色沢が特に良好なもの。最後に吟醸香を引き出すために少量の醸造アルコールを添加する場合もある。
フルーティで華やかな香りと、淡くサラリとした味わいの物が多いが、あさ開きのようにズッシリとした物もあり、酒蔵の個性が大きく反映される。
大吟醸酒のうち、精米歩合50%以下の白米、米麹及び水のみを原料とするものを純米大吟醸酒と言う。一般に、他の大吟醸酒に比べて、穏やかな香りで味わい深い。
大吟醸酒は最高の酒米を極限まで磨き、蔵人の力を結集して醸した日本酒の最高峰といえる。(参照:
「吟醸酒の誕生」)
ラベル表示用語 [編集]
任意記載事項 [編集]
- 原料米の品種名
- 酒造好適米など、特定の品種を原料米の50%以上使用した場合、品種名とその使用割合を表示することができる。
- 清酒の産地名
- 単一の産地で製造された場合、産地名を表示することができる。
- 貯蔵年数
- 一年以上貯蔵・熟成された清酒には、貯蔵年数を表示することができる。酒造メーカーによっては、1年以上熟成した酒に古酒・古々酒・大古酒・熟成酒・秘蔵酒などの名称を冠して販売することがあるが、年数と用語に関する統一された基準はない。
- 原酒
- 上漕後、割水もしくは加水調整(アルコール分1%未満の範囲内の加水調整を除く)をしない清酒。
- 生酒
- 製成後、加熱処理もしくは火入れを一度もしない清酒。牛乳などと同様に生もので劣化しやすいので、鮮度には注意が必要であり、冷蔵保存する必要がある(参照:#「生酒」の問題点)。
- 生貯蔵酒
- 製成後、火入れをしないで貯蔵し、製造場から移出する際に火入れした清酒。貯蔵期間については規定されていない(参照:#「生酒」の問題点)。
- 生一本
- 単一の製造場のみで醸造した純米酒。
- 樽酒
- 木製の樽で貯蔵し、木香のついた清酒(瓶その他の容器に詰め替えたものを含む)。
その他の表示 [編集]
- 生詰酒
- 生貯蔵酒とは逆に、製成後、火入れをしてから貯蔵し、製造場から移出する際には火入れを行わない清酒(参照:#「生酒」の問題点)。
- ひやおろし
- 冬季に醸造した後に春・夏の間涼しい酒蔵で貯蔵・熟成させ、気温の下がる秋に瓶詰めし出荷された清酒。本ページ「ひやおろし」参照。
以下3項目は、
上槽時に搾りが施されている間の時期(前期・中期・後期など)で分類されるが、明確な基準はない。
- 荒走り(あらばしり)
- 上槽時、すなわち槽という搾り器を使って醪(もろみ)をしぼるときに、最初にほとばしるように出てくる部分の酒のこと。圧力を加えないで、最初に積まれた酒袋の重みだけで自然に出てくるもの。一般に固形分である滓(おり)が多く、アルコール度は比較的に低めで、香りも高く切れ味が良い。
- 中取り(なかどり)・中汲み(なかぐみ)・中垂れ(なかだれ)
- 上槽時、荒走りの次に、中間層として出てくる部分。アルコール度や味は、ほどほどの中間点。味と香りのバランスが最も良い、あるいは荒走りより練られた味だ、とも評される。厳密には、この中取り、もしくは中汲み、中垂れという一つの段階の中にも、酒袋が槽いっぱいになるまで積まれたときに酒袋の山の自重で出てきたものと、自重に加えてさらに圧力を掛けたときに出てきたものの二段階がある。
- 責め(せめ)・押し切り(おしきり)
- 上槽時、最後に出てくる部分。特に槽搾りにおいて、圧搾して出てきた部分。アルコール度は高く、かなり練られた濃い味。
- 袋吊り・袋しぼり・雫しぼり・首吊り
- 上槽時、もろみを袋に詰め、袋を吊り下げてそこから垂れてくる酒をとる方法。出品酒などの高級酒に多く用いられる。こうして採られた酒は雫酒(しずくざけ)と呼ばれることもある。
- 斗瓶取り・斗瓶囲い
- 上槽時、出てきた酒を斗瓶(18リットル瓶)単位に分け、そこから良いものを選ぶ方法。出品酒等の高級酒に多く用いられる。
- 無濾過
- 活性炭濾過による香味調整をしない酒。
- にごり酒・おりがらみ
- にごり酒は、上槽の際に粗い目の布などで濾して、意図的に滓を残したもの。火入れをしない場合は瓶内部で発酵が持続し、発泡性のものになる。おりがらみは、滓下げをしないままのもの。どちらも、滓に含まれているや旨み、醪独特の濃厚な香りや味わいを楽しむために作られる。
- 地理的表示
- 国税庁の地理的表示に関する表示基準を定める件により、国税庁長官の指定を受けた地域において表示できる。産地の特長を生かすよう原料や製法等が制限される。また、この指定を受けると、他の地域で製造された清酒での類似表示(「○○風仕込み」「○○式清酒」)が禁止されるため、地域ブランドを保護できる。これらの理由から活用が期待されているが、2008年3月現在、日本酒では白山(白山菊酒、石川県白山市、2005年12月指定)のみがその指定を受けている。
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