イルカ同盟は、海の同盟、水平型
サル山同盟は、山の同盟、垂直型
リアルノッチとハイは、ホーリフィンを奪い取るための助っ人だった。三頭は、すでに、マンチを群れに取り込んでいた(ホーリフィンを略奪している間、マンチは群れから逃げなかった)。トリップス、バイト、セタスの群れが、ホーリフィンを拉致し、ふたつの群れに分かれた。ふたつの群れは、距離をあけずに、声が届く範囲にいた。私たちは、群れが他の群れと特別な絆を持つ理由を考え始めた(二次同盟と呼んでいるもの)。群れが協力して、第三の群れを圧倒し、メスを奪い取る理由も考えた。他の群れからの攻撃に対して、堅い防御壁を築く理由も考えた。
オスの政治的な世界は、群れ同士の協力によって複雑化する。オスは、自分の群れの中で関係を築くだけでなく、二次同盟の中でも協力関係を築かねばならない。イルカがさまざまな協力関係を築く発見は重要だ。哺乳類のオス同士はめったに協力せず、長期間の協力関係を結ぶことはほとんどない。二頭か三頭で群れを作り、さらに他の二頭か三頭の群れと協力関係を結ぶ哺乳類で、知られているのは、イルカと人だけだ。
たとえば、猟師の社会では、二人の兄弟が、資源を分け合って助け合う。兄弟は、村の他の小さな集団と協力関係を結び、村を守ることもある。他の村連合や近隣の部族に対抗するために、いくつかの村が共同戦線を張ることもある。さらに、現代社会では、共同体が幾重にも重なり、民族国家のような組織を築いている。後になって
「ワウ・クラウド(群集)」
と呼ぶオスの群れが、あることが分かったが、
この時点では、オスの複雑な関係を調べ尽くしていなかった。約十四頭からなる「ワウ・クラウド」は、それまでの群れのパターンと一致しなかった。ワウ・クラウドに出会うと、オスは、必ず全員がそろっている。ワウ・クラウドには、ペアもいるが、ペアの組み合わせが変わることもある。また、二頭か三頭からなる仲間関係は、安定していないし、二次同盟も作らない。リチャードは、ワウ・クラウドの構造を整理しようと決心した。ワウ・クラウドの観察に専念して、数年間の研究をした結果、その構造を「スーパー・アライアンス(超同盟)」と結論づけた。イルカは、同盟や二次同盟を作るが、スーパー・アライアンス内の仲間関係は安定してない。
同盟の発見と、同盟同士で協力関係を結ぶという発見には驚いたが、シャーク湾でのさまざまな協力関係のすべては分かっていなかったし、いまだに、分かっていないのかもしれない。
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