原発も、日米同盟? 日独同盟はなし?
「2030年代の原発ゼロ」を目指す野田政権の新しいエネルギー政策に対して、米国が繰り返し強い懸念を伝えていた。こうした働きかけが、野田政権が新政策の閣議決定を見送る大きな理由になったと見られる。米国はなぜ、日本の原発ゼロに反対するのか。
「米国も関心を持っている」。今月8日、野田佳彦首相と会談したクリントン米国務長官が釘を刺した。世論に押された政権と民主党が、原発ゼロに傾きつつあったころだ。
野田政権は新政策を発表する直前の12日、長島昭久首相補佐官らを急きょ派遣。ホワイトハウス、国務省、エネルギー省などで説明に回った。だが各所で「具体的な道筋が不明確だ」との不満が相次いだ。核不拡散への日本の協力の先行き、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理事業をどうするのか、人材育成への影響などについても懸念が示された。
中でも、米政権に影響がある新米国安全保障センターのクローニン上級顧問は「閣議決定をして政策を縛れば見直せなくなる」と、閣議決定に明確に反対。別の有力シンクタンクのトップは「野田首相を高く評価してきたが、今回は失望した」と突き放した。
同様の懸念は、9月中旬に訪米した北沢俊美元防衛相にも伝えられた。
パネッタ米国防長官も、17日に森本敏防衛相と会談した際、説明を求めた。
こうした動きを先取りする形で米側の姿勢を明らかにしていたのが、アーミテージ元米国務副長官ら、超党派のアジア専門家らが8月に発表した報告書だ。世界の原発建設で、今後中国が台頭し、ロシアや韓国、フランスとともに主要な役割を果たしていくとの見通しを示し「日本も後れをとるわけにはいかない」と指摘していた。
■核不拡散・対テロに不都合
日本が原発から撤退した場合、中国やロシアが、アジアや中東への原発輸出を加速させると見られる。米国が懸念するのは、中国などが日本に比べて核技術の拡散防止に真剣に取り組まない可能性があることだ。
日本は、これまで核不拡散について、米国の重要なパートナーを務めてきた。
米国は、日本との原子力協定で、核兵器を持たない国としては世界で唯一、核燃料の再処理やウラン濃縮を行うことを認めている。燃料の再処理を求める韓国に対して、朝鮮半島非核化の立場から難色を示しているのとは対照的だ。
これは、同盟国としての信頼に加え、日本が核不拡散条約(NPT)のもと、原発や関連施設に出入りする核物質の収支を正確に把握・確認する措置を積極的に実施し、不拡散のモデルを示してきた実績があるからでもある。
オバマ政権は、国家による核開発を防ぐ従来の核不拡散だけでなく、核テロ対策にも力を入れている。世界各国の核物質がテロ組織にわたる事態を防ぐ体制づくりを目指し、これまでに2度「核保安サミット」を開いた。オバマ大統領は14年までに、各国にある核物質の防護体制を確立したい考えで、日本の高い技術力に期待を寄せてきた。
例えば、核物質の移動を追跡できる「鑑識システム」の構築は、10年に開かれた核保安サミットで、当時の鳩山由紀夫首相が提案。日米共同の研究も進んでいる。日本が原子力から撤退すれば、米国は核不拡散や核保安の戦略見直しを迫られる可能性もある。
さらに日本は、米国の原発ビジネスのパートナーでもある。
米国は日本の原発事故以降も、原発を推進する方針を堅持。今年はスリーマイル島原発事故以来、34年ぶりとなる2カ所4基の建設を許可した。いずれも06年に東芝傘下に入った米ウェスチングハウス社の新型炉が作られるが、米国内では製造が難しく、日本から輸入せざるを得ない重要部品もあるという。
米国ではもう一つの原発メーカー、ゼネラル・エレクトリック(GE)も07年に日立製作所と事業統合している。日本の原発産業が長期的に衰退に向かえば、米国での原発建設にも影響しかねない。(ワシントン)
http://digital.asahi.com/articles/TKY201209240608.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201209240608
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