改革はトップダウンだけでは成功しない。ボトムアップの活動を活発にするマネジメントは必要不可欠なのだ。
企業でも都道府県でも国でも同じだ。トップダウンだけでなく、ボトムアップの変革を大切にする経営が成功への道なのだ。
「講義を減らしてプロジェクトベース教育を大幅に増やす」「海外研修をカリキュラムに加える」「民間の方の講義を増やす」など様々な新しい教育プログラムが発案されたのは、若手教員によるボトムアップ活動の成果だ。
(出典)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20081224/181266/
トップダウンとボトムアップの共存を考える
自発的な盛り上がりへと導くボトムアップの難しさ
2008年12月26日 金曜日 宮田 秀明
リーダーシップ チームマネジメント 経営者 組織マネジメント 組織・人事 ビジョン 経営革新
ある情報システム会社の方々と会い、初めて会食した時のこと。30分ほど話した頃、この情報システム会社の方に言われた。「ウチと競合していますね」。
経営システム工学という新しい分野の研究をテーマにして、すでに5~6年が経過した。ITと数理を駆使することで、新しい経営法や新しいビジネスモデルを創り出すことを目標にしている。
毎年、企業と守秘義務契約を結び、経営データをマイニングすることから始めている。色々なビジネスに共通することも少なくないのだが、それぞれのビジネス特有の難しさもある。だから、現実の経営データの分析は不可欠だ。5月頃からデータマイニングや解析作業を進めながら、共同研究者である学生の成長を待っていると秋になってくる。そして、11月、12月、1月の最後の3カ月が山場である。たくさんの解析結果から問題点を明確に示して、そこから、できれば根本的に改善する新しいシステムやモデルを創り出すことができるようになるのは毎年この3カ月になる。
新しいビジネスモデルの実行には組織マネジメントが必要
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新しいビジネスモデルを実行したり新しいサービスを開始したりする時には、そのモデルの論理的合理性や斬新さが必要なのだが、同時に、それを実行するための組織マネジメントの方法とそれを実行するエネルギーが重要である。
民間企業だけではない。地方公共団体についても同じことが言える。地方公共団体の経営には改善すべきことが多い。もし民間企業だったらとっくに倒産しているような団体も多いようだ。
地方公共団体の長は選挙で選ばれるので、候補者は、新しい行政サービスや新しい経営モデルを提唱して選挙を戦う。選挙で選ばれた首長は、人柄だけでなく、公約した行政サービスや経営モデルが有権者に評価されたわけである。
選ばれた以上、公約を実現しなければならない。この段階は、新しい経営システムが開発されて実装実行へ向かう段階と似ている。その公約を実現できるように組織を改造し、実務者が仕事に対する考え方を変えない限り公約の実現はおぼつかないのである。
首長に選ばれた時点から、いきなり職員と対立し、まるでケンカをしているような姿を見かける。このように組織マネジメント能力が十分でない方が首長になる場合は、首長の意欲にかかわらず、公約の実現が危ぶまれる。
組織マネジメント力がなければ、変革を実現することは難しい。組織マネジメントが大変難しいのは、人という一番難しいものを経営することだからだ。
ボトムアップのムーブメントを起こせる人は少ない
組織マネジメントの要諦の1つは、トップダウンとボトムアップの手法を併用すること。ビジョンを持ったトップが正しいビジネスモデルを獲得して、メンバーを引っ張っていく。そして同時に組織の現場に近い階層にビジョンや成長や進化を信じさせ、自発的な盛り上がりと、下からのムーブメントを起こすことが大切なのだ。トップダウンの経営を行える人は多いが、ボトムアップのムーブメントを起こせる人は少ない。大きな構想力と大きな人間力が要るからだ。
ほとんどの優良企業の経営者はトップダウンの経営力とボトムアップの経営力を兼ね備えている方だ。トップダウンの経営力だけで成功した例はほとんどないと言ってもいいかもしれない。地方公共団体の首長の方々も、このことをよく知ってほしい。首長と職員の子供っぽい対立はリーダーのマネジメント力の低さを示しているが、このような経営が多いと、日本の行政の経営力の低さが、国民の作り出した価値を減損することになってしまう。
1998年から1年半の間に、東京大学工学部の不人気4学科を廃止して日本初のシステム創成学科を作った時、トップダウンの手法とボトムアップの手法をうまく併用して組織改革を行うことができた。
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改革はトップダウンだけでは成功しない
東大の教養学部には、アンダーグラウンドの情報誌があって、本郷の専門学部への進学情報を流している。私たちの動きを察知して書かれた記事には、「今までの多くの例のように、形と名前を変えて、学生を誤魔化そうとしている」とあった。この記事を持ってきた助教授に私は言った。「こんなレベルの話は無視しなさい」。
若手教員からのボトムアップの動きをプロモートして行ったのは、新学科のデザインである。4学科をシステム創成学科に一体化して、新学科に4つのコースを設けることにしたのだが、若手の教員にこの4つのコースのデザインを自律的に行うよう依頼したのだ。しかも、4つのコースのデザイン・プロジェクトは相互に競争させるようにした。新学科のデザインにはたくさんの議論とたくさんのアイデアが要る。この新学科の設計を行って、実質的な主導権を握るのは若手の助教授になった。
「講義を減らしてプロジェクトベース教育を大幅に増やす」「海外研修をカリキュラムに加える」「民間の方の講義を増やす」など様々な新しい教育プログラムが発案されたのは、若手教員によるボトムアップ活動の成果だ。
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改革はトップダウンだけでは成功しない。ボトムアップの活動を活発にするマネジメントは必要不可欠なのだ。
企業でも都道府県でも国でも同じだ。トップダウンだけでなく、ボトムアップの変革を大切にする経営が成功への道なのだ。
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