青年よ、書を携えて、旅に出よう・・・ - すっぱまん
おいらのばあさまと似ているレーチェルさんです・・・
イルカの本の著者です・・・
オフィシャルサイトは?
Global Justice
http://www.globaljusticeecology.org/index.php
もちろんだが、レイチェルさんも、男爵です、笑い
こちらは、ばあさま男爵、笑い
キーワードは?
「女人禁制を打破する」
第四章 シャーク湾
じゆうといきていることをかんじる
イルカの調査にくわえて、シャーク湾についても調査した。オーストラリアの乾燥地帯のとげがある低木の光景や匂いと、そこから聞こえる鳥の声や湾の水の輝きに少しずつ慣れ、他の惑星からやって来た異星人のような感覚が薄らいで、風景の形や色が心の目に焼きついた。
シャーク湾は広さが約二万二千平方キロで、相当に広くて半分くらいが海だ。おおざっぱな地図で見ると、南回帰線の直下に電気の不正パルスのように横たわっている。湾の東側にオーストラリア大陸があって、西側はエーデルランド半島、バーニア島、ダーク・ハートグ島、ドーレ島からなる列島にさえぎられている。モンキー・マイアはペロン半島の大陸側の海岸にあって、デナムがその反対側の海岸にある。ときにはイルカの観察から離れて湾内を探索しようと、キャンプをするのに欠かせない物だけをボートに積み込み、二、三日かけて未踏の地へ行った。このときの探索は感動的で、私の記憶の中でもっとも光彩を放っている。シャーク湾の自然の驚異を初めてかいま見て、イルカだけではなく、シャーク湾自体も私を魅了していることに気づいた。
モンキー・マイアの浅瀬で、イルカと共に出会ったふたりの女性、デビー・グラスゴーとニッキー・フライヤーが同行した。ふたりともイルカと親密な関係になっていて、イルカの振る舞いを敏感に見ていた。ニッキーはスピリチュアル系のまじめな学生で、インドのアシュラムとモンキー・マイアを行き来していた。細身で優しく、髪の毛は茶色で、恥ずかしそうに笑うことが多かった。彼女は精神的な指導者から信念を伝えられていた。私にはその信念が受け入れられないこともあったが、人生の意味を追求する彼女の誠実さは評価できた。私たちはイルカのニッキーと区別するために彼女を
「人間ニッキー」
と呼んだ。
デビーはダンサーであり、アーティストでもあった。長い髪を三つ編みにして、背中にたらすか風になびかすかしていた。彼女にはきらめきと活気があり、楽しいことが好きな性格でクリエイティブだった。人間ニッキーとデビーはモンキー・マイアに長期間滞在した。イルカのそばで過ごすために、たまに見つかる片手間仕事をして生活を切り詰め、私たちの研究をたびたび手伝った。
私たちはモンキー・マイアを後にして、ペロン半島の海岸棚に沿って、ボートを北へ向けた。ローズ岬を過ぎて、ホエール・バイトへ入ったが、そこは不慣れな海域だった。グッチェンノールト・ポイントへ向けてさらに北上した。ペロン半島の先端がモンキー・マイアからはるか彼方の水平線上に揺らめいて見える。ペロン半島はグッチェンノールトよりもかなり先にある。
天気はかんぺきだった。日が照って、風は穏やかで、雲が水平線上にたなびいている。女人禁制と言えるような未踏の地なので、少しばかりナーバスになっていた。岸から離れていない棚の縁は安全に見えたが、島や岩礁がない開放水域のヘラルド・バイトを横切るときは不安だった。
デビーは前を向いて静かにへさきに座っていて、三つ編みの髪が風の中で後ろへたなびいていた。ニッキーは時々硬い笑いをして、エンジンの単調な音を聞きながら、個人的な夢想を楽しんでいた。私はボートを波間に入れて、水に濡れないようにと、船べりから立ち昇る水しぶきを払ったが、水に濡れるのは避けられなかった。三人とも興奮していたが、互いに何も話さなくても、冒険を共に楽しむ友情を感じていた。
私たちはヘラルド・バイトとペロン・ポイントの中間点の魅力的な砂浜に停泊した。そこは浅瀬が続いていて、岸から四百メーターの地点で錨を下ろして、荷物を抱えて浜辺まで歩いた。苦労のかいあって、夜のキャンプには絶好の地だった。風は凪いでいて、大きな灰色の雲が点々と浮かんでいる。成層圏へ向かってそびえ立つ雲もある。積乱雲なので雨が降り、夜は湿気に包まれそうだ。岸から離れたところに留めたボートが気がかりだった。ボートは文明の地へ戻る命綱なので、錨が効かずに朝になってボートが消えていたら大ごとだ。
腕一杯に荷物を抱えて砂浜に立つと、砂浜に大きなホラガイが突き出ていた。ピンクがかったオレンジ色をしていて、傷もなくて美しい。貝殻は浜辺へ打ち上げられるころまでには砕け散ってしまうのが普通なので、このホラガイは幸運だったのだろう。私にはこのホラガイが吉兆に見えた。
テントを張り、かまどを作って、キャンプを設営した。背後の赤いがけを登って景色をながめた。がけには山羊が残したたくさんの痕跡があった。角がついた山羊の頭蓋骨が、原型を留めたままで赤土の上に残っていて、山羊の足跡が侵食されたがけの側面を海へ向かって交錯している。野生化した山羊はのどが渇いたときに、海の水を飲むのだろうか。カンムリヅルとスズドリの鳴き声や、打ち寄せる波のゆったりしたリズミカルな音が聞こえてくる。がけの頂上では、片側からはシャーク湾を数キロほど見渡せる。もう片側からはペロン半島の景色が見える。綿のような雲と、あちこちで光るオレンジの稲妻が海面に反射している。長くて優美な雨のアーチが雲から水面へと連なり、水平線に沿って弧を描いている。
夜になる前にひと泳ぎした。他人の魂にはめったに入り込めないが、海には簡単に入れる。服を脱いで裸で海へ入った。
「ぴちぴち、チャプチャプ、ぴちぴち、チャプチャプ、ざ、ざ、ざっ~~~~~~」
と雨が降り始めた。
雨がいつ上がるか予測はできないが、激しくは降っていない。久しぶりにきれいな水を浴びた。めったにない素晴らしい雨のもてなしだった。私は浅瀬で踊って、自由と生を感じた。このときからずっと、自由の感覚と生の感覚を持ち続けている。
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