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2/23/2009

原爆の作り方

栄光なき天才たち」特別シリーズ ~ 近代日本の科学者群像Ⅱ ~
「理化学研究所」 ― ④ 日本の原爆製造計画(ⅱ) ―

 作.伊藤智義

1.図説(原爆の作り方)
 N「原爆の理論は極めて簡単である。ウラン235で、ある一定の大きさ(臨界量=純
  度にもよるがおよそ数㎏程度)のかたまりを作ればよいだけである。そうすれば中で
  自然に核分裂反応が進み、大爆発を起こす」

  解説図。
 (ウラン235の原子核に中性子を打ち込むと、原子核は2個または3個に分裂し、
  2×10の8乗eVという莫大な量のエネルギーが解放される。と同時に、この時、
  核分裂にともなって2個ないし3個の中性子も放出される。この中性子が再び核分裂
  反応を起こす。臨界量以上の大きさにすれば、この連鎖反応は自然に起こる。)

 N「しかし、この核分裂をおこすウラン235は天然のウランの中にわずか0.7%し
  か含まれていない。これをいかに分離して取り出すか、これが非常に大きな問題であ
  った」
  ・天然のウラン 99.3% U238  0.7% U235
   両者は化学的性質が全く同じで、重さだけ違う。これを同位元素という。同位元
   素を分離するには、そのわずかな重さの違いを利用するしか方法がない。

 N「この方法として、四つが考えられた」
 (1)電磁法
    イオン化したウランガスに電磁場をかける。軽い方がよく引っぱられる。
    (解説図)
 (2)超遠心分離法
    ウランガスを円筒に入れて回す。遠心力で重い方が外側に、軽い方が内側に残る。
 (3)気体拡散法
    気体はほうっておくと拡散する。その時、軽い方が先に広がっていく。
 (4)熱拡散法
    気体に熱を加えると、対流により、軽い方が上に、重い方が下にたまる。

 N「いずれの場合でも、まずウランを気体状にしなければならない。ウラン化合物で気
  体のものは唯一、六フッ化ウランのみであった。この六フッ化ウランの合成も難航が
  予想された」
   *
 N「こういう理論は、アメリカのマンハッタン計画と全く同じであった ― 」

2.理研
 ― 昭和18年 ―

3.同・研究室A
  説明している研究者、武谷三男。
 武谷「現在のわが国の技術力を考えると、電磁法はまず無理であり、超遠心分離法、気
  体拡散法は何年で装置が組み立てられるかわかりません。結局残ったのは、熱拡散法
  ということになります」
  聞いていた仁科、スッと立ち上がる。
 仁科「よし!段取りは決まったな」

4.イメージ
  4人の研究者たち。
 ― 玉木英彦・臨界量の計算担当 ―
   *
 ― 武谷三男・熱拡散法の理論計算担当 ―
   *
 ― 竹内柾・熱拡散法装置製作担当 ―
   *
 ― 木越邦彦・六フッ化ウラン担当 ―
 N「この4人を中心に、アメリカとは比較にならない程小規模ながら、日本でも原爆製
  造計画が本格的に始動する。
   当時、陸軍の極秘研究はイ、ロ、ハ、ニというカタカナの符号がつけられていた。
  そこで、原爆研究は仁科の名をとって"二号作戦"と名付けられた」

5.研究室B(熱拡散法分離筒製作室)
  一人コツコツと熱拡散法の分離筒を組み立てている竹内。
  そこに仁科、来る。
 仁科「どうだい竹内君。進んでるかい?」
 竹内「それが、資材が思うように集まらなくて…」
 仁科「資材?そんなものは軍に行けばいくらでも手に入るんじゃないのか?」
 竹内「そうか。これは軍のトップ研究でしたね。よし、すぐに行ってこよう」

6.市谷・陸軍航空本部
  軍人1と交渉している木越。
 木越「それじゃ、研究についての経費はどうなるんです?」
 軍人1「とりあえず仁科研で支払い、あとでまとめて請求してくれ」
 木越「まとめればそのつど、航本で支払ってくれるんですか?」
 軍人1「航本の希望としては、そういうことだ。お前たちの方でまず必要なものは何か?」
 木越「硝酸ウラニルがもっとほしい」
 軍人1「理研側でできるだけ手当てしてくれ。やむを得ないものだけ航本でメーカー、
  業者に頼んでやる」
 木越「資材の運搬については?」
 軍人1「それも理研でやってくれ。そのかわり軍需品輸送証明書を発行する。統制品以
  外のものは証明書を発行する」
  木越。
 ― これじゃ、何もかも理研でやれということじゃないか ―
  そこに竹内、来る。
 竹内「アレ?木越君。君も資材調達かい?」
 木越「あ、竹内さん」
 竹内「(軍人1に)仁科研の竹内という者ですが、モーターが一つ欲しいんですが…」
 軍人1「ここにはない」
 竹内「ない?」
 軍人1「モーターを作る資材をやるから、それを日立なりどこかのメーカーへ持って行
  って引き替えてくれ」
 竹内「それじゃ、その資材を下さい」
 軍人1「まず、お前たちの必要なモーターの資材の一覧表を持ってきたまえ」
   *
  一覧表を持ってくる竹内。
 軍人1「(それをチラッと見て)この一覧表を持って資材係へ行ってくれ。配給キップ
  をくれるはずだ」

7.資材係
  来る竹内と木越。
  一覧表を軍人2に渡す竹内。
  軍人2、それを無造作に机の上にほうり出す。
 竹内「配給キップを下さい」
 軍人2「順番だ」
 竹内「これは軍極秘の二号研究だから、一番最初に」
 軍人2「みんな重要な仕事だから、そんなわけにはいかん」
  見る竹内。

8.道
  疲れた足取りで帰途についている竹内と木越。
 竹内「疲れたな…」
 木越「ええ…」
 竹内「オレたちの仕事って、たしか陸軍最高機密だったよな…」
 木越「たぶん…」
  大きなタメ息をつく二人。

9.病室
  床についている鈴木梅太郎。
  ぼんやり窓の外に目をやっている。
 鈴木「(つぶやく)いったい日本は…」
 N「昭和18年9月20日、日本の将来を心配しつつ、理研の大黒柱の一人鈴木梅太郎
  は他界する」

10.イメージ
  雨の神宮外苑競技場。
 ― 10月21日 出陣学徒壮行大会 ―
 N「その一ヵ月後、学徒出陣が始まり、この頃から喫茶店などが次々と閉業し始める」

11.街
 N「街並には悲壮な空気が漂い始めていた」

12.研究室C(六フッ化ウラン研究室)
 N「そういう中で ― 」
  木越。
 ― フッ素はできた。ウランも粉末状だが一応できた。あとはこいつをくっつけるだけ。
  しかしどうやって… ―
 木越「ええい、ままよ」
  試験管に入れたウランに、直接フッ素を反応させる木越。
  そこに竹内、やってきて、
 竹内「木越君」
  その声に木越、振り返る。
  次の瞬間、パーン!と破裂する試験管。
 竹内「(ビックリ)オイ、大丈夫か?木越君」
 木越「(腰を抜かしている)ハハハ…竹内さんが呼んでくれたおかげで、目をつぶさな
  いですみましたよ」
   *
 N「彼らの苦闘は続いていた」

13.研究室A
  研究者を集めている仁科。
 仁科「君たちはいったいどんな気持ちでやっている。原爆はできるのか、できないのか?」
 竹内「(見る)できないと思います」
 仁科「君は?」
 木越「私も…できないと思います」
 竹内「いつかはできるかもしれませんが、今次大戦に間に合うとはとても思えません」
 「そんなつもりなら…」
  めずらしく怒りの表情をみせる仁科。
  しかし、ふと一息ついて、
 仁科「まあ、がんばってくれ」

14.所長室
  安田中将が来ている。
 安田「どうですか?原爆はできそうですか?」
 仁科「…今は、何とも言えません。ただ、ウランの絶対量があまりにも足りなすぎる」
 安田「わかっています。そちらの方は軍が責任を持って捜します」
 大河内「ピッチブレンドはどうかな?」
 仁科「ピッチブレンド?」
 大河内「キュリー夫人がラジウムを発見したという鉱石のピッチブレンドだよ」
 仁科「そうか、ピッチブレンドか…」
 安田「?」
 大河内「ピッチブレンドの中にはウランもまじっている。そしてチェコスロバキアには
  その鉱山がある。さいわいそこはドイツの占領地だ」
 安田「(ハッとなり)ピッチブレンドですね?わかりました」
  そそくさと出ていく安田。

14.市谷・航空本部
 安田「駐独の大島大使からの返事は?」
 軍人3「はい。『何に使うのか』と」
 安田「ふん、ドイツ(むこう)もピンときたというわけか…」
 軍人4「(来る)大島大使から第二報。『ドイツ政府は分けられない』」
 安田「大島大使にすぐ打電しろ!『われわれがピッチブレンドがほしいのは、原子力の
  開発に使うためだ。われわれは、いま日独同盟のもとに、米英を相手に食うか食われ
  るかの戦争をしている。その一方のわが国が原子力の開発をやろうというのに、それ
  に協力しないというのは何事であるか』と」
 「ハッ」
  と出ていく軍人4。

16.ベルリン・日本大使館
  電文を読んでいる大島大使。
 大島「こうなったら直接ヒトラーと交渉するか…」
   *
 N「大島大使の交渉の結果、ドイツは日本に2トンのピッチブレンドを送ることとなっ
  た」

17.世界地図
 N「しかし問題はドイツからの輸送方法だった。当時は独ソ戦の最中でシベリア経由と
  いうわけにはいかないし、輸送船で運ぶというわけにいかない。結局、ドイツの潜水
  艦で日本まで運ぶということになった」

18.夜の港
  静かに出港する潜水艦。
 N「しかし、ドイツを出航した潜水艦が日本に到着することはなかった。途中で撃沈さ
  れてしまうのである ― 」


 (④・終)



 理化学研究所 ⑤



原子爆弾のやさしいつくりかた




小宮山亮磨訳

以下の文書はThe Journal of Irreproducible Results, Volume 25/Number4/1979. P.O. Box 234 Chicago Heights, Illinois 60411(訳注1) より転載。


1.はじめに


アメリカ合衆国法廷で、原子爆弾のつくりかたを記した記事の大衆誌掲載を制限する判決がいくつか下されたために、近年世界的な論争が巻き起こっています。そのような情報が世間に広く知れわたれば、国家の安全が危うくなるから、というのがおきまりの判決理由です。でも、大都市にあるほとんどの図書館に行けば、原爆製造に必要なすべての情報がすぐ手に入るのはよく知られていることで、したがって裁判所の公式見解がもっと重要な要素、すなわち平均的な市民はアホすぎて原爆なんか作れやしないという事実を隠蔽せんとするものであることはあきらかでしょう。アメリカ司法としては、おまえらキャベツ並の知性すら持ち合わせていないとほのめかして、国民の大部分を侮辱するわけにはいかないのです。したがって、国家の安全を規制の口実にした「公式見解」が発表されるわけですね。

このようなまちがった情報が広まった結果として、変な噂が不幸にしてうまれてしまいましたが、そんなのとはサヨナラしたいですよね(いや、是非ともサヨナラしましょう)。というわけで、今月の課題は核反応装置の組み立てです。これにより、こうしたプロジェクトについてみなさんにもありがちな誤解が、見事消し去られるといいですよね。10個の易しいステップで装置を自作して、好きな形で保有活用することがどんなに簡単かはすぐにわかることでしょう。もう政府や裁判所にうるさくあれこれ言わせません!

この課題には、どのくらいの出来をめざすかにもよりますが、500万ドルから3000万ドルの資金が必要となります。

先週(訳注:たぶん「先月」の誤り)のコラム「タイムマシーンをつくろう」からはじまったステップバイステップ形式がご好評いただきましたので、今月のコラムも同じ形式でいきましょう。


2.つくりかた

まずはじめにお近くの業者さんから、兵器にできるくらい品質のよいプルトニウム(注)を110ポンド(50キロ)ばかり手に入れましょう。原子力発電所はおすすめできません。プルトニウムが大量に消えたりしたら、発電所のエンジニアが悲しみますからね。お近くのテロ組織に連絡をとるのもよいし、近所にある青少年育成会(訳注:the Junior Achievement。アメリカでできた教育団体で、日本にもある)に相談するのもひょっとしたら吉かもしれません。

プルトニウム(とくに精製後で純度が高いものほど)がちょっぴり危険なシロモノだということをお忘れなく。さわったあとはセッケンとぬるま湯で手を洗いましょう。子供やペットがいじくりまわしたり食べちゃったりしないようにも気をつけて。プルトニウムの残りかすは、殺虫剤として最高です。できたら近所のゴミ捨て場で鉛の箱をひろって、ブツはそこにしまっておくのがよいでしょう。古いコーヒーの缶でもだいじょうぶです。

装置をしまう金属製の入れ物もいっしょにつくりましょう。通常の金属板を曲げて、ブリーフケースやおべんとうばこ、あるいは車のビュイックなんかに見せかけましょう。アルミホイル(訳注:原文ではtinfoil)は使わないこと。

半球型のプルトニウムのかたまりを2つつくって、4センチくらい離します。プルトニウムのカスがでないように、ゴムのセメントで固めましょう。

さて次に、TNT火薬を220ポンド(100キロ)くらい手に入れましょう。ゼリグナイト(訳注:ダイナマイトの一種)のほうがずっといいのですが、あつかいが大変です。この品物は親切な機械オタク野郎がよろこんで用意してくれるでしょう。

ステップ4でつくった半球型のかたまりのまわりにTNT火薬をつめこみましょう。ゼリグナイトが見つからなかったら、TNT火薬を粘土といっしょにつめこんだってかまいません。色つき粘土でもよいですが、ここでそんなに手をかけることもないですね。

ステップ6でつくった装置をステップ3の入れ物にいれましょう。それから「基地外ボンド」みたいな強力接着剤をつかって、入れ物に半球型のかたまりをしっかりと固定しましょう。振動や手荒な取り扱いのせいでいきなり爆発したりするのを防ぐためです。

しかけを爆発させるために、無線の制御装置を手に入れましょう。ラジコンの飛行機やラジコンカーのなかに入っています。起爆剤のふたにぶつかって小さい爆発をおこすことになるリモコンのプランジャーを、ほんのちょっとの努力でつくれますよ。起爆剤のふたは、近所のスーパーの電気部品コーナーで見つかります。Blast-O-Macticブランドなら、リサイクル用のデポジット(預託金)不用でリサイクルも受け付けてもらえず、(レゲエな方たちに持って行かれる心配もないので) おすすめです。

つぎに、完成した装置が近所の人や子供たちに見つからないようにしましょう。ガレージは湿度が高くて温度も異常に上がることがあるので、おすすめできません。核爆弾はこういう不安定な環境ではかってに爆発することが知られています。ろうかの戸だなや台所の流しの下などにしまえばかんぺきです。

さあいよいよ、あなたは実用的な核爆弾の立派なオーナーです! これでもうパーティでの会話には事欠かないでしょうし、ピンチのときには国家防衛にもつかえますよ。

注:
原子番号94のプルトニウム(Pu)は放射性金属原子です。ネプツニウムの崩壊によってできる原子で、化学構造はウラニウム、サツリウム、ジュピタニウム、マリスム(訳注2)と似ています。


3.メカニズム


この装置は基本的に、TNT火薬の爆発でプルトニウムがある臨界質量にまで圧縮されたときに起動します。臨界に達すると、ドミノ倒しに似た核連鎖反応が始まります(連鎖反応については1968年3月の本コラム「ドミノの行進(マーチ)」(訳注3)で説明しました)。連鎖反応はすぐに巨大な熱核反応をうみだします。そしてはい、10メガトンもの大爆発のできあがり!


4.来月のコラム


来月のコラムでは、となりの奥さんのクローンをつくるかんたんな6つのステップについて勉強しましょう。この課題で楽しくてお得、エキサイティングな週末が過ごせることうけあい。必要なのはふつうのキッチン用具だけ。それじゃ、また来月!


5.コラムのバックナンバー訳注4

生身のティラノサウルスをつくろう!
太陽系をつくろう!
タイムマシーンをつくろう!
反重力マシーンをつくろう!
宇宙人とコンタクトをとろう!


訳注1:
この雑誌は現在も、The Annals of Improbable Research と名前を変えて存続しています。(母屋コメント:厳密には、存続していません。AIR は、JIR とはまったく無関係な別の雑誌であり、継続ではありません。たまたま内容や編集スタッフがまったく同じだったというだけです。)
訳注2:
これはジョークで、こんな原子はほんとはありません。プルトニウム、ウラニウム、ネプツニウムってのはみんな神話にでてくる神様(それぞれプルートー、ウラヌス、ネプチューン)にちなんでつけられた名前で、これは実在します。でもサツリウム、ジュピタニウム、マリスムなんていう原子はほんとはないんだけれど、神話にやっぱりサトゥルヌス、ジュピター、ステラマリスっていう神様がでてくるから、こういう原子名をかってにでっち上げて遊んでいるわけです。
訳注3:
たぶんこれはベトナム戦争とドミノ理論の話に関係した駄洒落だと思う。ドミノ理論っていうのは、冷戦当時のアメリカが信じてた国際政治の考えかたなんだけど、となりの国が共産主義になるとその国も病気に感染して共産国家になっちゃう。つまりそうやってドミノみたいにバタバタと共産主義が広がっちゃうわけで(ドミノの行進)、これはどこかで止めないと、アカが世界に蔓延することになるからヤバイ、と。で、当時の北ベトナムは共産主義の最前線で、ということは南ベトナムは資本主義(というか非共産主義、なのかな)の最前線で、そのぶつかりあいがベトナム戦争だったわけ。そして時まさに1968年の3月、つまりMarchに、ベトナムのソンミ村で米軍による虐殺事件があったのね。けっこうなスキャンダルだったらしいんだけど(「ブラックジャック」にもでてくるし)、たぶんこれ関係の話。確証はないけど。ちがうかなあ。(母屋コメント:むしろ 1968 年 1 月のテト攻勢が念頭にあるのではないかと)

訳注4:
この部分の別バージョンとしては:
  1. 試験管ベビーを作ろう! (1979 年 5 月)
  2. 太陽系を作ろう! (1979 年 6 月)
  3. 不景気を作ろう! (1979 年 7 月)
  4. 反重力マシーンを作ろう! (1979 年 8 月)
  5. 宇宙人とコンタクトしよう! (1979 年 9 月)

というものがある。



Re:原子爆弾のの作り方 【カリフォルニア大学バークレー校】
http://www.asyura2.com/0601/bd45/msg/177.html
投稿者 World Watcher 日時 2006 年 7 月 13 日 20:16:27: DdDUJ9jrxQIPs

(回答先: 原爆はナチス製だった →高橋五郎 新刊 (リンク) 投稿者 kokopon 日時 2006 年 7 月 12 日 22:41:21)

今月発売の【紙の爆弾8月号】に"原爆の作り方"という大変興味深い記述があるので一部を紹介しよう。(全文を読みたければ購入してください)
http://www.rokusaisha.com/0test/top02.html

■禁断の【核兵器製造】文章をどう読むか

これから紹介するのは【原爆の作り方】としてインターネットで密かに出回っている"禁断の地下文章"の全訳である。
これは世間では"あぶない文書"と見なされており、そういう曖昧な"世間"の評判に流されやすい日本では、邦訳されたものを日本語で読む機会さえ皆無であろう。
しかしそれを敢えて翻訳し、ここに紹介したのは、実際に問題の文章に接して、本当に世間で信じられているような"恐ろしい文章"なのかどうか、自分で確かめて頂きたいからだ(ちなみに海外では大学などのWEBサイトに参考資料として提示されているものもある。ここに紹介した文章の原文も、カリフォルニア大学バークレー校のWEBサイトで公開されていたものだ)
お読みになればすぐにわかるが、実際には原爆についての啓蒙的な概説にすぎない。
そして言うまでもないことだが、この"禁断の文書"を参考にして原爆を自作するなんて、不可能である。
なぜならそもそも一番大切な材料である核分裂性のウランやプルトニウムを入手できないし、仮にそれらを入手できたとしても、ウラン塊やプルトニウム塊を破損させずに正確に連鎖反応を起こさせるための技術的情報がまったく記されていないからだ。
"マイ原爆"が入手したくてこの文章に挑む者がいれば、お気の毒としか言いようがない。
本物が欲しければゼロから自作するよりも、零落した核大国の没落軍人あたりから密かに買うほうがずっと簡単で安全でしょうね、おそらく....
この"禁断の文書"を読んで誰でもわかることは、皮肉にも、原爆の自作なんぞ試みたら未熟爆発や放射能汚染で自分の命が危うくなるということだろう。
そういう意味では、原爆の危険性を理解するための概説として、やはり一読しておくべき価値がある。
けれども、このような啓蒙的な文献が、2001年の【9.11事変】以降、テロ予防の名目で次々と隠され、人々の目に触れにくくなっている。
決定的に重要な技術情報ならば機密扱いするのはやむ得ないだろうが、十把ひとからげで、知識や情報を隠蔽するという"言論への恐怖政治"が静かに進行しているのだ。
人々に考える機会を与えてくれる文献や情報は、残しておかなければならない。
それらを読んで議論できる状況を確保しておかないと、原子力帝国が完成して人々の理性は窒息してしまうだろう。
ジョージ・オーウェルの【1984年】に出てくる息苦しい管理社会みたいに...

■Documentation and Diagrams of the Atomic Bomb
File courtesy of Outlaw Labs
Author: J.D. Dyson [jdyson@nyx.net]

DISCLAIMER
The information contained in this file is strictly for academic use alone. UC Berkeley will bear no responsibility for any use otherwise. It would be wise to note that the personnel who design and construct these devices are skilled physicists and are more knowledgeable in these matters than any layperson can ever hope to be... Should a layperson attempt to build a device such as this, chances are s/he would probably kill his/herself not by a nuclear detonation, but rather through radiation exposure. We here at UC Berkeley do not recommend using this file beyond the realm of casual or academic curiosity.

警告文
このファイルに含まれている情報は、学術目的の個人使用のみに限定されるべきものである。
カリフォルニア大学バークレー校は、それ以外の目的でこれが用いられた場合には、何ら責任を負わない。
念のために記しておくが、これらの装置の設計や組み立てを行っているのは、この分野について深い理解を有する習熟した物理学者に他ならず、素人には到底望むべくもないことである。
万が一にも素人がこうした装置の組み立てを試みれば、おそらく核爆発ではなく放射性被爆によって自らの命を落とす事になるだろう。
われわれ、カリフォルニア大学バークレー校は、学術的な好奇心の領域を超えてこのファイルを用いる事をお勧めしない。
http://www.nuc.berkeley.edu/neutronics/todd/nuc.bomb.html


原子爆弾の設計は日本では許されているのですか。
困り度:
IHIのある課長が、原子力研究所か動燃に出向していた時、
みんなで原爆の設計をしていて、怒られたと自慢げに話していますが、
原爆の設計自体は日本でもOKなんでしょうか?

核爆発を起こすことは禁じられています。
 その名も「放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」​http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO038.html​
というのがあり

「第三条  放射性物質をみだりに取り扱うこと若しくは原子核分裂等装置をみだりに操作することにより、又はその他不当な方法で、核燃料物質の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又は放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、無期又は二年以上の懲役に処する。 」
と決まっているわけです。

 昔は「核爆発を妄りに起こすと懲役7年(!)」という決まりだったんですが、いつのまにか(正確には166国会で)改正されていたんですねぇ(ちなみに、これで死人が出たり、国家転覆の意図が失敗したりすると、殺人や内乱罪などにも問われます)。
 まあ、改正後で当然の法定刑と言える気がしますが。

問題はこの先です。
同条の続きは
「2  前項の罪の未遂は、罰する。
3  第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、五年以下の懲役に処する。ただし、同項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。 」
とあります。まあ、これも当然といえば当然ですが・・・。

 ここで問題なのが、某課長ら一味の行動が「予備」に当たるかどうかです。
第一に、「罪を犯す目的」があったか
第二に、「実際に予備と言える行動があったか」
というあたりが争点となりそうな感じです。
ここで質問を見る限りでは、第一の点についてはなさそうですし、第二の点についても詳細な図面を上げるまでには至っていないような気がします。だとすれば、まあ、怒られるだけでなんとかなるんじゃないでしょうか。

 ちなみに設計自体はそれほど難しいことではないはず。バリバリ文系の回答子ですら、概念的な作り方はわかるほどですから。でもそれと実際に予備・未遂・既遂の各段階にいたる間にはそれぞれかなり高めの「越えられない壁」が存在しています。
種類:回答
どんな人:一般人
自信:参考意見
ログインして投票する
参考になった:0件
回答日時:08/09/08 04:36回答番号:No.1
この回答への補足 ぼくは国の機関で税金を費やしている原研や核燃料サイクル機構?
で原爆の設計を行うこと自体が問題だと思っていたのですが、遊びならいいということでしょうか?
そう解釈するとSM(課長)からもっと科学や英語(Toic200点)を勉強しろと言われた意味がわかります。また途中からぼくの研究発表をみないようになったのも理解できます。
ぼくは一応理系ですが、原爆の作り方は知りませんでした。物理と数学がとても苦手だったので。また高校の先輩が化学の実験で失明しているので、危険には敏感になりすぎているのかもしれません。
IHIは原爆ぐらいは作る知識がないといけないレベルの人たちの集まりだったのか、と自分の認識のなさを恥じるべきだったとも思います。他にも自分では犯罪ではないかと思うことがいくつかあるので、また質問させていただきます。
ありがとうございました。
(概念さえ知らない自分を本当のバカだと再認識しました。できたら勉強しなおします。)
この回答へのお礼 ありがとうございました。

第三回 原子爆弾の作り方

-核の恐怖-
はじめに
誤解のないように言っておくが、原爆作れって言っているのではない。材料さえあれば誰でも作れる危険性を示したいだけである。フランスや中国の地下核実験で大使館の前に座り続けた市民団体がいた。いつのまにかいなくなったが・・・。ヒステリックに核反対を唱える前にまず原子核の知識を身につけることは大切である。

U+n(中性子)→Kr+Ba+3n
上記の核反応式(化学反応ではない)を見て頂きたい。ウラン235に中性子を当て、クリプトン、バリウムの二つに核が分裂した。この核分裂反応においては反応前に比べ反応後の質量はわずかに減る。では減った質量はどこにいったんだろう?今世紀最も偉大な物理学者、アルバートアインシュタインは特殊相対性理論の中で質量とエネルギーが根本的に同じであることを証明した。核反応で減った質量をΔm(Kg)、発生したエネルギーをE(J)、光速をC=300,000(km/s)として

E=Δm×C×C

で与えられる。この式で注目したいのはである。質量の減り、Δmがわずかでも発生するエネルギーが莫大であることがわかる。化学反応の比ではない。さらに上記の反応で3個の中性子が発生している。もしすぐそばに3個のウランUがあり中性子が当たれれば同じ反応が起きこれが繰り返されると核分裂反応が3、9、27、81・・・と、等比級数的に増えてゆく。一回の反応が引き金となってねずみ算的に反応が繰り返される。これを連鎖反応という。少量のウランでは確率的に連鎖反応は起きないがウランの体積がある値を超えると連鎖反応が自然に引き起こされる。この体積を臨界容積(以後Vと置く)と呼ぶ。このVが原子爆弾の製造で重要な意味を持つ。JCOの放射能漏れ事故ではバケツでウランを汲み(いい度胸しているぜ)容器に移し替えた時にVを超えてしまった。

最も簡単な原子爆弾、ガン・メソッド(砲撃法)
では原子爆弾の製造の実際であるが準備するものとして、
①臨界容積分のウラン235。このまま放っておくと連鎖反応が起きるので半分ずつの塊に分けておく。こうすることでそれぞれの塊は連鎖反応が起きずに済む。
②ダイナマイト少々
③一端を閉じた鋼鉄製の容器
手始めに容器の閉じた一端に臨界容積の半分のウランを詰め込む。必ず隙間を空けてもう一端に残りのウラン、ダイナマイトの順に詰めて容器を閉じる。
後はダイナマイトの爆発によってもう一方に激突させて臨界容積に到達させる。こうして臨界に到達すると核分裂(核爆発)が起こるというわけ。

以上の製造法は広島に落とされた原子爆弾である。実に単純な製造方法であるが、実際問題としてウラン235はまず手に入らない。経済的な問題である。要するにウラン235は希少性ゆえ値段が高いってこと。そこでウランに代わる安い代用品がある。プルトニウムである。現在世界中で作られている原子爆弾はプルトニウムが材料となっている。しかしプルトニウムではガンメソッドでは作れない。なぜなら自発的に核分裂を起こして中性子を放出するプルトニウムが存在するためで、二つのプルトニウム塊を完全に結合する前に連鎖反応が始まる危険性があるからだ。そのためにガンメソッドとは異なる爆縮法なる方法が必要となる。残念ながら?この製造方法は複雑すぎてここには書けない。

さいごに
核の恐怖を伝えたかったのだが・・・原子爆弾の製造に偏りすぎてしまった。あ、そうそう核兵器ってなまものなんだ。ウランやプルトニウムは放射性元素であり時間とともに崩壊し劣化してゆく。すると古くなったやつは実験にでも使おうかって大国の身勝手な考えも生まれる。それとねえ核反応は確率の支配する世界でもあるんだ。(専門的に言うと不確定性原理っていいます)誤解を恐れずに言うと核の制御は丁半ばくち打ってるような一面もある。ほんとに原子力発電所が安全なら過疎な場所に作らないし、安全といいながら非常事態に備えた安全装置なんてもの付いてないって。

2007/11/7
柄谷行人

1 現象と物自体

 カントといえば、現象ともの自体という区別が有名である。われわれは現象しか知りえない、という不可知論が知られている。しかし、現象というのは、カントの場合、特に悪い意味ではない。現象を認識するということは、外からやってくる感覚的なデータを、主観によって処理し構成するということである。具体的にいえば、それは先ず仮説を立てて、実験するということだ。現象が主観によって構成されるというのは、このようなことを意味する。
 別の言い方をすれば、近代科学は、限られた事例(単称命題)から、法則=普遍的命題(全称命題)を引き出すものである。しかし、これはいかにして可能なのか。カントは、一般的な主観による構成にその根拠を求めたようにみえる。が、カール・ポパーは、それでは不十分だと考えた。すべての事例を調べることはできないからだ。
 たとえば、「すべて人間は死ぬ」という全称命題をどのように証明するのか。そこで、ポパーはいう。まず全称命題を提示した上で、それに対する反証がないかぎり、暫定的に真理であるとみなす、と。「すべての人間は死ぬ」という命題は、死なない人がいるという反証を誰かがもってくるまでは、真とみなしてよい。誰かがいつか、そのような反証をもってくるかも知れない。ゆえに、「すべて人間は死ぬ」という全称命題は、暫定的に真とみなされる、仮説にとどまる。
 ポパーは、一般的主観から始めるカントを批判して、このように他者との対話と合意によって科学的認識が成り立つことを強調した。しかし、ポパーがここでいうような他者は、今ここにいる他者であるよりもむしろ、いつか反証してくるかもしれない未来の他者のことだ。そのような他者を前提しないならば、科学認識、つまり法則(全称命題)そのものが成り立たないのである。
 このことは、認識の真理性が他人の同意にもとづくということとは異なる。近年では、他者との同意、間主観性、公共性によって、真理を基礎づけようとする哲学者がいる(ハーバーマスなど)。しかし、そのような他者の同意は真理を保証するものではない(その点で、デカルトの懐疑は正しい)。「未来の他者」が異議を唱え反証してくるかもしれないことを予期するかぎりで、普遍的命題(真理)が存在するのだ。
 ここから見ると、カントのいうことは新鮮にみえる。第一に、科学的認識を「現象」と呼ぶのは、それがついに仮説にとどまる、という意味にほかならない。さらに、カントがいう物自体とは、物(対象)というよりも、むしろ物をもって反証してくるような「他者」のことである、というべきである。そのような他者は、まだ存在しないとしても、いつやってくるかもしれない。それは、われわれの思い通りにならない、説得することもできない未来の他者だ。そのような他者を想定するからこそ、科学認識が成立するのである。
 『実践理性批判』では、他者が物自体として論じられている。つまり、物自体は道徳的(実践的)次元において見出されている。しかし、実は、『純粋理性批判』で科学認識が論じられるときも、物自体としての他者が不可欠な前提となっている。
 
2 現象と仮象

 カントが否定的に見ているのは、仮象(Schein)である。仮象は現象(Erscheinung)と違って、感性的な直観にもとづかない。ただ、考えられただけのものだ。考えられただけのもの(例えば神)が、実際に「存在する」というためには、(感性的)直観を通さなければならない。
 通常、仮象は、理性によって取り除くことができる。古来、哲学は、感覚にもとづくドクサと、理性にもとづくエピステーメーを区別してきた。同様に、カントに先行する啓蒙主義者は、理性にもとづいてさまざまな仮象を批判した。しかし、カントは、彼は、感性だけでなく、理性もまた仮象をもたらすと考えたのである。それが形而上学である。
 感覚によってもたらされる仮象は、理性によって訂正される。しかし、理性によってもたらされる仮象は、理性によっては是正されない。そもそも、それは理性が必要とするものであるから。カントは、理性がどうしてもさけられない仮象を、「超越論的仮象」と呼んだ。自由、神、魂の不死などがそれである。
 例:超越論的仮象としての自己。デカルトの「スム:我在り」は、「同一の自己がある」ということを意味する。それに対して、ヒュームは、同一の自己などは仮象である、という。たとえば、前日の自分と今の自分とは違う。自己同一性などない。しかし、同一の自己という幻想がなくなると、実際に、深刻な病気(統合失調症)になる。自分という仮象は、生きていくために不可欠なのだ。さらに、社会的に、同一の自己がないと、行為に対して責任をとることができないということになる。ゆえに、同一の自己は仮象であっても、取りのぞけないような仮象、つまり、超越論的仮象である。
 カントもまた啓蒙主義者である。しかし、彼は啓蒙主義そのものを批判する啓蒙主義者、いわば、永続的啓蒙主義者であった。

3 統整的理念(理性の統整的使用)と構成的理念(理性の構成的使用)

 カントは、ある種の超越論的仮象は、実践的に有益であり、不可欠だと考えた。その場合、彼はそのような仮象を「理念」と呼んだ。ゆえに、理念とは、そもそも、仮象である。
 例:詰め碁や詰め将棋では、実戦でならば解けないような問題が解ける。それは詰むということがわかっているからだ。サイバネティックスの創始者ウィーナーは、自ら参加したマンハッタン・プロジェクトで原爆を作ったあと、厳重な情報管理をしたという。それは原爆の作り方を秘密にすることではない。原爆を作ったということを秘密にすることだ。作れるということがわかれば、ドイツでも日本でもすぐにできてしまうからだ。いわば、原爆の作り方が構成的理念だとしたら、原爆を必ず作れるという考えが統整的理念である。
 ある理想やデザインによって社会を強引に構成するような場合、それは理性の構成的使用であり、そのような理念は構成的理念である。しかし、現在の社会(資本=ネーション=国家)を超えてあるものを想定することは、理性の統整的使用であり、そのような理念は統整的理念である。仮象であるにもかかわらず、有益且つ不可欠なのは、統整的理念である。
 
4 事前/事後の差異

 理性の統整的使用と構成的使用の差異は、事前と事後という立場の差異として考えることができる。出来事を、事後の立場からふりかえって見るとき、理性の構成的使用が可能である(規定的判断力)。事前の立場から見ると、理性の統整的使用が必要となる(反省的判断力)。
 一般に、カントは、事前の立場に立っている。未知の未来に対して、何らかの目的論を想定する必要がある。理性の統整的使用とは、目的がある「かのように」想定することである。それに対して、ヘーゲルは事後の立場に立つ。つまり、すべてを結果から見る。「本質は結果においてあらわれる」。
 ヘーゲルに対する批判者として、キルケゴールがいる。彼の考えでは、いまここにイエスがいるとしよう。このみすぼらしい男をキリスト(メシア)だと信じるのは、「命がけの飛躍」である。ところが、ヘーゲルは、イエスがキリストであるということは、現にキリスト教が世界的に広まっているという事実によって証明されるという。
 キルケゴールは、「思弁は後ろ向きであり、倫理は前向きである」といった。その意味で、彼はヘーゲルからカントに戻っている。実は、マルクスも同様である。彼もヘーゲルからカントに向かったのだ。未来に向かって現状を乗り越える、つまり事前の立場に立つ者は、理性の統整的使用を必要とする。マルクスは歴史に関して構成的理念を一切斥けた。つまり、未来社会についての設計を語らなかった。彼にとって、コミュニズムは統整的理念である。そして、彼はそれを生涯保持した。
 しかるに、コミュニズムを歴史の必然として、社会を理性的に構成しようとしたマルクス主義者は、ヘーゲルの事後的な立場を、事前の立場に持ち込んだことになる。そのようにして、統整的理念と構成的理念が混同される。「理性の構成的使用」は暴力的強制となる。その結果、理念一般が、あるいは理性一般が否定されるようになった。

5 統整的理念
 
 ポスモダニストは、歴史の理念は仮象だという。しかし、カントによれば、理念はそもそも仮象なのだから、あらためていうべきことではない。理念を否定する人々は、かつて統整的理念と構成的理念を混同した人たちである。(アツモノにこりてナマスを吹く)
 理念を嘲笑する人たちは、それが超越論的仮象だということ、それがなければ人が生きていけないということを知らない。
 第一に、先進国で、社会主義は幻想だ、大きな物語にすぎないといってすんだとしても、世界資本主義がもたらす悲惨な現実に生きている人たちにとっては、それではすまない。現実に一九八〇年以後、世界資本主義の中心部でポストモダンな知識人が理念を嘲笑している間に、周辺部や底辺部では、宗教的原理主義が広がった。少なくとも、そこには、資本主義と国家を超えようとする志向と実践が存在するからだ。
 第二に、先進国では、理念を否定するどころか、現状において、理念が実現されたと考えるようになった。自由民主主義という理念である。世界史はまさにそのような理念の実現である。それ以上の理念は空虚であり、不毛である。このようにいう人たち(フランシス・フクヤマなど)がヘーゲルを引用したのは、こじつけではない。実際、ヘーゲル自身が、カントの理念(世界共和国)を嫌い、それを否定しようとしたからである。
 ヘーゲルにとって、世界史はナポレオン、つまり、資本=ネーション=国家の確立において実質的に終っている。それ以上の課題はない。ゆえに、ヘーゲルにとって、理念は現実的で、現実は理念的である。それ以上のことを望むカントは、空疎な理想主義だということになる。
 しかし、資本=ネーション=国家を越える統整的理念をもたないならば、たんにそのような構造の犠牲になるだけである。そして、資本=ネーション=国家が交換様式の問題であるならば、それを越えることも交換様式の問題である。世界共和国という理念は、たんに理想主義なのではなく、現実的な基盤(交換様式)に根ざしている。


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