民主党はグラスルーツ
共和党はティーパーティ
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1970年代のカステルの関心は、公共の財やサービス(集合的消費)の局面において、国家の介入や計画の重要性が高まるにつれ、それが矛盾して作用することにあった。この国家関与の増大と同時進行的に高まるのが都市社会運動である。ここでの社会運動とは、必ずしも階級に基づいたものではなく、組織の諸資源を用いて数ある目的の中でもとりわけ公共財の再配分権を主張するものである。 それまでのマルクス主義分析では何よりも生産に重点が置かれ、脱産業社会における政治経済において重要なその他の社会現象を扱う余地がなかった。この点に注目することでカステルは、集合的消費、国家介入の増大、都市計画の矛盾作用、都市グラスルーツの抵抗、近隣組織、都市政治に目を向けることになったのである。 ただし近年のカステルは、こうした都市計画と都市社会運動という二分法的発想からは離れている。
オバマ大統領の就任式の直後に始まったことから反オバマ運動としての右派の側面もある。 「ティーパーティー」(Tea Party)という名称は、当時の宗主国イギリスの茶法(課税)に対して反旗を翻した1773年のボストン茶会事件(Boston Tea Party)に由来しており、同時にティーは「もう税金はたくさんだ」(Taxed Enough Already)の頭字語でもある[3]。 ただし現代のティーパーティーは、ボストン茶会事件の時と違って課税反対は象徴的意味しか持たず、実態は、総じて税金の無駄遣いを批判して「小さな政府」を推進しようという運動である。 最初に「ティーパーティー」という歴史用語を現代政治に蘇らせたのはロン・ポール下院議員であった。それは2007年12月16日のことで、彼はボストン茶会事件232周年を祝う集会を開催[4]し、翌年の共和党大統領予備選の資金集めのためにウエブサイトを開設して支持者と募金をつのったのである[5]。ポールは、熱心な小さな政府論者で、当時のブッシュ政権の方針にも反対していた。彼は2008年大統領予備選で敗れたが、次の2012年の立候補を目指して”彼のティーパーティー”は現在でも活動しており、インターネットを活用した草の根運動というところなど、現在の運動の雛型にもなっている。[6][7]
最初に「ティーパーティー」という歴史用語を現代政治に蘇らせたのは
ロン・ポール下院議員であった。それは
2007年12月16日のことで、彼はボストン茶会事件232周年を祝う集会を開催
[4]し、翌年の
共和党大統領予備選の資金集めのためにウエブサイトを開設して支持者と募金をつのったのである
[5]。ポールは、熱心な小さな政府論者で、当時のブッシュ政権の方針にも反対していた。彼は
2008年大統領予備選で敗れたが、次の2012年の立候補を目指して”彼のティーパーティー”は現在でも活動しており、インターネットを活用した草の根運動というところなど、現在の運動の雛型にもなっている。
[6][7]初期の抗議活動 [編集]
抗議活動のめばえは、
リーマン・ショックに端を発するアメリカの
景気後退を背景に、異なる動機で、異なる形態ではあったが、しかし草の根的に各地で起こっていた。
2009年1月24日、ニューヨーク州で知事がダイエット飲料以外のソフトドリンクに18%の課税をすると、通称「肥満税」または「ソーダ税」の増税を提案したのに反対して、ニューヨーク市で若い活動家が
アメリカンインディアンのように羽根飾りをつけてボストン茶会事件の故事を模した抗議活動
[8]をした。これはメディアに登場した最初の関連活動である。この法案は結局否決された。
このため、初期の運動はポーキュラス抗議などと呼ばれ、その主張は総じて「オバマは社会主義
[14]」というものだった。現在では最初のティーパーティー抗議と見なされている、
2月10日の
フロリダ州フォートマイヤーズ市役所前でのメアリー・ラコビッチの抗議の模様でもプラカードに豚の写真が見える
[15]。これら少人数による反オバマの抗議が地元メディアで報道されると、
FOXニュースが飛びつき、抗議者を番組ゲストに喚ぶなどして盛んに全国にむけて放送した。また後述するが、当初からフリーダムワークス
[16]がこの広報戦略には関わっていた
[17]とされる。彼らはオバマ個人に批判を集中させないようにアドバイスしていた。しかし当初、報道は保守メディアに限られ、本格的に世間に認知されたのは下記の出来事が起こってからであった。
ティーパーティー命名の経緯 [編集]
2009年2月19日、
CNBCの経済アナリストである
リック・サンテリ[18]が、シカゴ
証券取引所からの生中継中に、オバマ政権の
サブプライムローン問題で焦げ付いた住宅ローンを再融資するという救済案を、悪い行いを奨励する
モラル・ハザードであると厳しく批判し、「支払いに窮した他人のローンを代わりに払ってやろうという人間が、一体このアメリカに何人いるのか」と熱弁して、近くにいたトレーダー達の拍手喝采をうけた。彼はさらに
建国の父たちを引き合いに出して、「
ベンジャミン・フランクリンや
ジェファーソンのような人々は、今我々がしていることを見て墓の中でひっくり返っているだろう」と言って、大統領の方針に反対するため「シカゴ・ティーパーティー」と名付けた抗議活動を起こそうと(半ば冗談で)呼びかけた
[19]。このオバマ大統領のお膝元で起こった”シカゴの反乱”とも呼ばれた出来事が、直接的な運動の名前の由来となっている。
動画は瞬く間に広がり、呼びかけに応じてすぐにいくつかのオンラインサイトが自主的に(またはフリーダムワークスによって)立ち上げられて、多くの賛同者を集めると、
2月27日、シカゴを含む全国40以上の都市でより愛国的な「ティーパーティー」の名前を冠した抗議活動として実を結び、これが報道
[21]されたことから、他のメディアでも使われていくようになった。なおサンテリが発言した翌日の2月20日には、
ロバート・ギブス報道官が異例の反論を行ったが、「法案をちゃんと読んだのか」と懐疑的に述べるとともに、相手を小馬鹿にしたような態度をとったため、その動画も広まり、沈静化するどころか逆に抗議活動を煽った面が少なくない。
抗議活動の特徴 [編集]
抗議活動は、前ブッシュ政権からの負債と景気後退による、近い将来に
増税が行われるのではないかという不安
[22]から起きた抗議から始まり、
黒人のオバマ大統領の誕生と、景気刺激策に伴う国家
債務の増加に対してその懸念
[23]が高まって、財政規律を求めて広まった。信用不安の際に
銀行には巨額の資金が投入されたのに対して、銀行に支払われた住宅ローン差し押さえ救済資金が不十分であったことも不満の要因である。抗議は、2009年3月に
AIGの
役員に
賞与が支払われたことが明らかになると劇的に盛りあがり、抗議集会で公衆に認識されるまでになった。
抗議活動は、
ブログ・
MySpace・
Facebook[24]・
Twitter・
YouTube・インターネット掲示板等の現代的なオンラインツールを活用しているのが特徴で、主要メディアからばかりではなく、個人の発言を含めた、双方向の情報発信で政治運動に活気が吹き込まれているのが、草の根といわれる所以。ティーパーティー参加者の情報源はテレビ(47%)、インターネット(24%)、新聞(8%)、携帯メール(4%)の順
[25]。
抗議活動の全米への広がり [編集]
2009年3月13日、FOXテレビの番組司会者で右翼の論客
グレン・ベック[26]は、「
9-12プロジェクト[27]」と銘打った、首都ワシントンでの抗議行動を目指す、挑発的な政治企画を番組内で始めた。どこが挑発的かというと、わざわざ
同時多発テロ9・11の翌日に回帰を求めてアメリカの団結を訴えたことで、テロ被害を臆面もなく政治利用するとともに
[28]、日頃からベックが独裁者・社会主義者・共産主義者と罵るオバマ大統領が敵としてテロリストと同視されているのは明らかだったからだ。9-12プロジェクトは、後にティーパーティー運動と合流した。
2009年4月15日の
Tax Day(アメリカの
確定申告締切日)には、750以上もの大小ティーパーティー各団体が全国各地で抗議集会を組織するに至り、運動の広がりは驚きを持って報道された
[29]。各団体は連合して、ラジオ司会者マーク・ウィリアムス
[30]をスポークスマンとし、同月28日から「ティーパーティー・エクスプレス」と題した全米ツアーも開始した。彼らは33都市を巡って、
9月12日に首都ワシントンで7万人規模の「納税者の行進」のイベントを行い、次第にアメリカ政治の注目を集めた。この日の抗議集会の企画元
[31]であるFOXテレビとグレン・ベックは、特別番組を編成して模様を生中継した。ちなみにエクスプレスの方は現在までにすでに3回
[32]の全米ツアーを敢行している。
ティーパーティー運動がアメリカ政治の潮流として脚光を浴びたのは、
2010年1月19日、
医療保険(メディケア)改革に熱心に取り組んでいた民主党の大物
エドワード・ケネディ上院議員の死去に伴う上院補欠選挙でのことだった。この
マサチューセッツ州の議席は、民主党とケネディー家が約半世紀守ってきた牙城であったが、これが共和党の新人候補者
スコット・ブラウンによって奪われたのである。これにはティーパーティー運動が大きな役割を果たしたとされ、ブラウンはその支持を受けて共和党予備選を大差で勝利すると、本戦でも民主党の推す女性候補を破って勝利。これは「マサチューセッツの奇跡」とも呼ばれ、
保守の逆襲の始まりとして気勢が上がった。
ワシントンD.C.,非政治的と称する「名誉回復」の集会で演説するグレン・ベック,2010年8月28日
2010年2月4日から3日間、
テネシー州ナッシュビルで初のティーパーティー全国大会が開催され、さらにその広告塔として、
サラ・ペイリン前共和党副大統領候補(前アラスカ州知事)が高額の出演料
[33]で担ぎ出された。彼女は大会の基調演説を行い、「アメリカは第二の革命に進もうとしている、みなさんはその一員なのです」と述べて喝采を浴び、反オバマ色を鮮明にした。
2010年4月15日、二回目となるTax Dayの抗議では、全米数千箇所で抗議集会が開かれたと報道されている
[34]。共和党の予備選を前にしたこの3月、4月は運動は特に活発で、単なる大統領や議会への抗議から、候補者への圧力団体にシフトする傾向が見られる。
2010年8月28日、
ワシントン大行進から47周年になる
キング牧師の演説記念日に、首都ワシントンのリンカーン記念堂前でティーパーティーが主催する「名誉回復」を掲げた大規模な集会が開かれた。この集会を呼びかけたのはグレン・ベックで、サラ・ペイリンもゲストで招かれた。ベックは自ら演説して「神への回帰」を説き、キリスト教への信仰心を持って18世紀の建国の父の思想に立ち戻るべきだと訴えた。あえて黒人公民権運動活動家の記念日にほぼ白人のみ(後述)の集会を開いたことに対して「キング牧師への侮辱だ」との批判が続出したが、ベックは「30万~50万人が集まった」と称して、11月の
中間選挙を控え、ティーパーティー運動と保守派の勢いをアピールした。またこの非政治的集会によって、運動には宗教的保守の側面があることも明らかになった。
最近のティーパーティー運動は、
保守派の草の根運動の代名詞となりつつあり、共和党の非主流派の活動とリンクして、集票マシン化しつつある。また小口の支援者を大量に集める集金力も運動の強みである。しかし政策面では、ティーパーティー各グループの主張にはばらつきがあり、余りに保守的(財政保守主義だけに留まらず、
宗教保守派の主張が色濃く、中絶禁止や同性婚の反対なども含む
[35])なため、実際の選挙では鍵となる中道と無党派層の支持を失う結果になるのではないかとも分析され、依然としてその影響力は未知数で、中間選挙の結果に運動の真価が試されることになる。
2010年9月28日の
WSJ紙とNBCの共同世論調査
[36]によると、11月の中間選挙に最も強い投票意欲を示している有権者の3分の1がティーパーティー支持者で占められていることがわかって政界での影響力の拡大を誇示した。しかし共和党内では71%がティーパーティー参加者であるが、全体でみると、ティーパーティーの支持不支持は30%前後でほぼ拮抗しており、鍵となる無党派層の42%は運動を好意的に評価しているものの、同時にその61%がティーパーティー支持者ではないと答え、議会でティーパーティーが大きな勢力になることについては41%が否定的な見解を示した。
保守派のティーパーティー運動に対抗して、
ポピュリズム(ここでは大衆運動ほどの意味)と闘うためにさらなるポピュリズムの力が必要だと考えるグループにより、民主党支持基盤のリベラル派の草の根運動にも
コーヒーパーティー運動と呼ばれるものができて、ティーパーティー同様に、全国に拡大している。
さらにこれとは別に、
2010年10月2日、ティーパーティーに反対する左派リベラル団体(
アメリカ共産党など)やゲイ団体により、「ワン・ネイション」集会
[37]がワシントンのナショナル・モールで開かれた
[38]。この「ワン・ネイション」集会は前述の「名誉回復」集会よりも人の出は大いに劣ったが、ティーパーティー運動の盛り上がりとともに、反対勢力も活気づいてきているという表れであろう。
参加者の特徴 [編集]
当初、ティー・バッグを手紙で送るという手法で活動していた背景から、この運動の参加者は、ティーバッガーと呼ばれたことがあるが、卑猥な意味
[39][40]もあるため、最近では集団としてティーパーティーという呼び方、呼ばれ方が一般的である。運動の参加者は無知な連中だと切り捨てる、リベラル系雑誌ネーションの発行人カトリーナ・バンデンヒューベルは、
ABCテレビの政治討論番組「
ジス・ウィーク」に出演した際、ティーバッガーという呼び方を続けて、対談相手にたしなめられたことがある
[41]。現在ではティーバッガーには侮蔑的意味があると見なされている。
2010年2月に開催された全国大会の参加者はほぼ全てが白人であったと、日本でも報道された
[43]。
CBSニュースの調査
[44]によると、参加者における
白人の比率は89%と圧倒的で、黒人は1%、アジア系1%、ヒスパニックを含むその他は6%に過ぎなかった
[45]。男女の差はあまりないが、男性がやや多く、既婚者が70%に達する。民主党支持は5%で、大半は共和党支持54%と無党派41%であり、しかも92%は民主党嫌いと答えた。中西部22%や南部36%の出身者、銃保持68%、プロテスタント(主に
バプティスト派)61%、など、共和党のなかでも特に保守派傾向の強い地域、
大卒以上(70%)の
高所得者層(76%)で、45歳以上(75%)の
中高年が多いという特徴がある。
現在アメリカで最大の課題とされてる経済について、参加者は、現在の経済状態はとても悪い(54%)と答え、さらに悪化する(42%)と考えているが、そうなった原因は議会にあると考えている人が28%と一番多い。これはアメリカの平均的な認識とは顕著に異なり、原因について全米調査の意見として一番多いのは、ブッシュ政権の失政の(32%)である。一方、所得税については、参加者の52%が適正と答え、不適正と答えたのは42%と少なく、これは全米意見の適正(62%)と不適正(30%)の割合よりも多いものの、ティーパーティー運動が課税反対運動であると単純に言えない理由がここにある。減税については賛成も反対も拮抗しており、これは全米意見とほとんど大差なかった。ティーパーティーは後述のようにオバマ政権にも満足していないが、政策上の不満と怒りの矛先は議会に向けられていて、別の最新の調査
[36]でも、議会不支持率(73%)はオバマ不支持率(49%)よりも格段に高いことがわかっている。「ボストン茶会事件」の時と違って、増税というよりも税の無駄遣いを問題にし、
小さな政府を求めているというのが真の姿である。
参加者は不法移民問題では強硬派であり、82%が不法移民流入に断固とした措置を講じるべきだと考えている。これはメキシコ国境の州では激しい争点だが、増加するラテン人口の支持を取り込むのは望み薄で、ティーパーティーの選挙での弱点の一つである。また
2010年4月12日の
オハイオ州スプリングボロでのティーパーティー集会ではTwitterで、
ラテン系アメリカ人を侮辱する「スピック」という表現で不法移民の多さに怒りを表したメッセージが流れて問題になった
[46]。
さらに参加者の82%は
同性婚を深刻な問題ととらえており、40%は
ゲイ・レズビアンのカップルには一切の法的権利を認めるべきではないと答える宗教保守派の立場であるが、ほぼ同数の41%はシビル・ユニオンは容認するという妥協派に分かれる。
人種差別に対する批判 [編集]
集会では、オバマ大統領の顔を映画「
ダークナイト」の
ジョーカーに模して描いた人種差別的なプラカードがしばしば見られて物議をかもしている
[47]。肌を白塗りにしたこの姿は、ハリウッドが黒人役を黒塗りにした白人俳優が演じた過去にあてこすったもので、オバマ大統領が白人を演じる黒人であるとの誹謗の意味が込められている。またこれらのプラカードには、人種差別的内容以外に、大統領を
社会主義者と罵る文面や
ムスリム[48]としてレッテル貼りするなど、個人批判に近い文章が書かれていることが多く、過度に扇動的で、ティーパーティー運動が、元来の大きな政府や増税批判に留まらない、
アメリカの分裂[49]を象徴する運動であることがうかがえる。
ティーパーティー運動が
人種差別を内在するのかはアメリカでも議論が続いている。ティーパーティー運動に反対するリベラリストの61%は彼らの反オバマの姿勢の根底には人種差別的敵意があると見る一方で、ティーパーティー運動を支持する保守派の7%しかその意見に賛同しない。しかし参加者の52%は最近黒人との人種的軋轢が高まったと答えており、25%はオバマ政権では白人よりも黒人が優遇されると答えている。参加者自身は、人種差別と関連付けられることは、メディアが作り上げたでっち上げであると主張することが多く、ティーパーティーに参加した数少ない黒人参加者達は、一様に、不当不快な扱いは受けていないと証言している。
とはいえ、集会や集会参加者のなかには弁護のしようのない人種差別が見られたのは事実である。扇動者としての役割を果たしているリンボーやベック、マーク・ウィリアムスの過激な言葉には、愉快犯的で意図的な差別表現があり、聴衆への悪影響も懸念される。プラカードにたまに見られる「ナチ」や「ファシズム」、「ヒトラー」といった表現は、彼らの言葉そのままの受け売りである。活動家のデイル・ロバートソンは「議会=奴隷主、納税者=
ニガー」と書いた看板をもっていて批判を浴びた
[50]。また通りかかったオバマ支持者や民主党員に対して、参加者がかなり酷い言葉や罵声を浴びせた場面はしばしば目撃されており、ティーパーティー各団体は、Nワードなどは使わないように参加者に注意している。
一方、ティーパーティーの集会では、アメリカで由緒のあるガズデン旗がシンボルの一つとして好んで用いられている。この旗のモットーは「俺を踏みつけるな」であり、これには貧富の差の拡大を背景にした、オバマ支持層のニューリッチやインテリ、エリート階層への反発が込められていて、反エスタブリッシュメント、つまり既存政治への不信感が運動の原動力の一つとなっているとされる。
オバマ政権の対応 [編集]
オバマ政権と民主党は、ティーパーティー運動をたまにジョークのネタにする程度で、表だった批判は控えている。また「そんな運動があることはまったく知らない」と無視することもあった。これは連邦予算の削減や、減税といった運動が求める政策を次々と行っており、中低所得者に重点を絞った各種ケアなど政策への理解が浸透すれば、少なくとも無党派層からの支持は最終的には得られるだろうとの、楽観視があるからである
[51]。それに共和党が医療保険改革などを槍玉にして強烈な反対運動を起こすであろうことは織り込み済みで、驚きはなかった。民主党やリベラル派メディアは一貫して、ティーパーティー運動を、前述のような人種差別や党派主義に凝り固まった姿を強調して、過激派と関連づけようとしてきた。
ホワイトハウスの執務室,2009年7月21日, オバマ大統領と側近
2009年4月29日、オバマ大統領は歳出の無駄削減を約束し、「働くアメリカの家族を助ける」のは本当は誰か(どの党か)を見定めて欲しいと語った
[52]。また
2010年4月10日の大統領週間演説と
15日の講演では、Tax Dayのティーパーティーの抗議を考慮して、繰り返し減税を行ったことをアピールした
[53][54]。しかし15日の講演は内輪向けのもので全般的にジョークが多い軽いもの
[55]だったため、「彼らはありがとうというべきだ」などと茶化す場面も見れた
[56]。民主党資金提供者の聴衆は喜んだが、嘲られた側には反発と憤りもあって、攻撃材料にもなっている。
側近の4人組の一人として知られる大統領上級顧問
アクセルロッドも、2009年のTax Day抗議の後、経済状態が悪いときはいつでも不満はでるものだが、政権が(公約通りに)「アメリカ人の95%が対象となる減税」を行ったのに(課税反対運動が起こるとは)当惑させられると述べた
[57]が、これは後から考えれば運動に対する認識を欠いた発言だった。4人組への批判は民主党内でも次第に強まっており、ジョン・ポデスタ
[58]は、大統領自身は幅広い意見を聞く耳を持っているが、「4人組が自分たちとは違う反対意見を大統領の耳に入れようとせず、世論を敵に回している」のではないかと
[59]言っていて、対応のまずさがあったのではないかと危惧するむきもある。
ラスムセン世論調査
[60]によれば、参加者のうちの89%がオバマ大統領の政権運営に不満で、国が正しい方向に進んでいると回答したのは4%だけだった。94%は政府は特定の利益団体にのみ恩恵を与えていると考えており、この考え(つまり政権が民主党であろうが共和党であろうが自分の利益団体のみを優遇するということ)は参加者以外でもアメリカ全体の67%に支持される。
主要閣僚の一人である
ガイトナー財務長官は、
NBCのインタビューにおいて、我々は赤字を削減して財政均衡に注意しているとして、「オバマ政権はティーパーティー運動と同じ側にいる」と強調した。彼は「赤字が重要でないと言っていた政権(前ブッシュ政権のこと)の8年を過ごしましたが、今、大規模減税案を議会に通し、新しい政策を大きな負担なしに進められています」と述べて、共和党がどのような政策をしていたか人々に思い出させようとした。ところが、FOXニュースではこのガイトナーの話を全く違うトーンで伝えており、彼の話はウソであるとして、ほぼ80%のアメリカ市民はワシントンの既成政治を信じてないと言い、ブッシュ前大統領は最後の1年間で4586億ドルの赤字をこしらえたが、オバマ大統領は2009年度会計で1兆4000億ドルの赤字をこしらえたと指摘して反論し、赤字は今後も1兆ドルを上回り続けるだろうと予想して非難した
[61]。
アメリカの分裂があまりに深刻なため、リベラル派の意見ははなっから聞かないという保守派も少なくない。双方のメディア攻勢はこれを助長している面が大きいことは前述の通りで、過激なまでに熱を帯びている。オバマ大統領の医療保険改革を説明するマサチューセッツ州の
タウンミーティングでは、オバマ大統領をヒトラーに模した写真を持ったティーパーティー活動家が「ナチの政策をなぜ支持するのか?」と質問し、民主党の名物下院議員バーニー・フランクが「逆にあなたはどこの惑星で暮らしているのか?と聞きたい。まったナンセンスだ。・・・あなたとの会話は机に向かって一人で話しているのと同じだ」とやり返す場面も見れた
[62]が、リベラルと保守の対立はこうまで深刻なのである。
現在、景気対策が効果を上げるのはまだかなり先のため、中間選挙を目前に控えて、保守派の攻勢には危機感が高まっているのも事実で、当初は高かったオバマ大統領の支持率も低下しつつある。著名なリベラル派の論評コラムニストの
ポール・クルーグマンは、「今、オバマ支持者はまったく確信を失っているようだ。おそらくオバマ政権の退屈な現実が、変化を夢見ていた人々の期待を満たしていないからだろう。そうしている間にも、怒れる右派は激しい情熱に満たされつるある」と分析している
[63]。
草の根は本物か? [編集]
ネバダ州サーチライト,2010年3月27日, 第3回エクスプレスに集まった大群衆。壇上にはペイリン
2009年4月12日付けの
ニューヨーク・タイムズ紙
[64]において、前述のクルーグマンは、ティーパーティーは自然発生的な国民感情が発揮された結果ではないと主張した。彼によれば、ティーパーティー運動はいわば「
人工芝(草の根を装った政治イベント)」であり、共和党の戦略を担当するいつもの面々によって創られたもので、その中心的役割を担っているのはフリーダムワークス
[16]という元下院院内総務のリチャード・アーミーによって運営されている組織であり、いつもの右派の億万長者たち
[65]によって経済的に援助されていると指摘。そして運動はFOXニュースによって大々的に宣伝されることで支えられているところが大きいとした。民主党下院議長
ナンシー・ペロシなどもこの説に同調し、「これは本物の草の根運動ではなく、富裕層への減税をやめて中間所得者への減税に振り分けようとする(民主党の政策)から目を反らすための”人工芝”」と述べた。
ただしこれには反論もあり、(
リバタリアンのコメンテーターおよび著名なブロガー)グレン・レノルズは、翌
4月13日付けの
ニューヨーク・ポスト紙において、草の根は天然芝(本物)であり、参加者はデモに慣れたセミプロの抗議者ではなく、仕事を持つ普通の人々、今まで抗議行動に参加したことがないような人々で、アメリカ政治に最近見かけなくなったエネルギーを吹き込む、新しい活動家であると指摘した
[66]。またティーパーティーの全国大会が、クルーグマンが指摘するような共和党保守派有力者がはっきり後援しているティーパーティー・パトリオッツという団体からのスポンサー契約を断ったことなどを受けて、ティーパーティーが必ずしも共和党に従属する存在ではないとも指摘。ワシントン・イグザミナー紙において、ティーパーティー運動は下から上への運動であり上から下へのものではない、自立自尊であると主張して、「アメリカ第三の覚醒」であるとまで言い切った
[67]。
とはいえ、TPM
[68]のリポーターであるブライアン・ビュートラーの
4月14日付けの補足記事
[17]にもあるように、少なくとも当初は演出された草の根であったと考える根拠がいくつかある。また同じくTPMのザカリー・ロスは、多くのティーパーティー団体が共和党やフリーダムワークスに会計処理を任せて事実上資金提供を受けていると指摘した
[69]。フリーダムワークスについては、このティーパーティー運動以前にも、他の草の根運動をプロデュース
[70]してきた実績があり、共和党のオペレーションが動いていることに疑いの余地はない。しかも今回は非常に効果を上げていると言えるだろう。ティーパーティー・エクスプレスなどの大規模イベントも明らかに組織化された動員型の政治イベントである。
しかし団体や参加者が全て組織化されているかといえばそうともいえず、過激なプラカードにも現れるように、雑多で無秩序な集団であるのも事実だ。運動が拡大する課程で、不満をもつアメリカ人(の特に白人)の琴線にふれるものがあったのだろう。運動自体には確かに制御不能の本物の勢いがある。また参加者の78%は保守派の共和党員で、共和党に投票するが、その75%が共和党主流派と関係のないアウトサイダーの候補を支持すると表明
[60]しており、運動がこうも盛り上がった今、後述のように共和党主流派はその対応に苦慮しているといえるだろう。彼らの怒りの矛先は必ずしもオバマ政権や民主党に留まらず、共和党主流派にも向けられていて、しばしば
ロス・ペロー支持者のような予想の付かない投票行動をみせることがあり、共和党の戦略担当ヴィン・ウェーバーは、「この
草の根運動は本物である。それが利用するのを難しくしている」と認めた
[71]。
ニューヨーク・タイムズ紙の別の著名な論評コラムニストの
デイヴィッド・ブルックスは、ティーパーティー運動が景気の後退や、既成政治への不満、閉め出された不満分子の受け皿となったと背景を指摘した上で、「
今後10年を特徴付ける政治運動となる可能性がある」と主張する
[72]。また彼は「ティーパーティーがいずれ共和党を支配するだろう」とも予想した。草の根運動が既成の二大政党制の枠組みを突き崩すのではないかという見解もある
[73]。
運動の問題点 [編集]
現在のティーパーティー運動の問題点は、各地に分散するティーパーティー団体を結集する政治的指導者がいないことと、思想面での
イデオローグが固まっていないことである。
最近ティーパーティー集会にひっぱりだこのサラ・ペイリン。(写真は大統領選挙当時のもの)
サラ・ペイリンは保守主義者の間で最も人気のある政治家だが、同時に指導者としての資質に問題があるとされ、「大統領の器ではない」という評価
[74]が定着しつつある。また共和党支持者以外を含めると彼女には支持者と同じ数だけの反対者がおり、かつての保守層と無党派層の両方を結集した
ロナルド・レーガンのような理想的なリーダーではない。グレン・ベックも保守派の間に限れば知名度は高いが、反対派からは”狂った”と形容されることもあるほどの超保守派
[75]で、しばしば共和党の議員をも口汚く罵ることがある。またグレン・ベックは、最近宗教色の濃い言動が多いが、自身が
キリスト教系の新興宗教である
モルモン教徒であるため、もし選挙などになったらバプティスト派が大半の宗教保守派からの支持はあまり期待できないとの分析もある。ただ彼の言動は保守派に影響力
[76]があり、オバマ大統領を当選させた
オプラ・ウィンフリーのような役割は可能かもしれない。とはいえ、前述のレノルズは、ティーパーティーは指導者を必要としてはいない
[67]と言っていて、草の根はあくまでも下からの運動というスタンスを取っているので、それに従えば、中心となる政治的指導者がいないことは弱点というよりも特徴といったほうがいいだろう。
ちなみに同じく前述の調査(2010年4月時点)
[44]では、ティーパーティー参加者の中での指導者の支持率は、サラ・ペイリンが61%(反対12%)、グレン・ベックが59%(反対6%)、ブッシュ前大統領が57%(反対27%)、ロン・ポールが28%(反対15%)となっていた。しかし参加者に運動のゴールを聞くと、自分たちが支持する大統領候補を擁立するはわずか7%に過ぎず、指導者を担ぎ出そうとする欲求が低いことが分かる。全米ティーパーティー同盟
[77]などは、ゴールの一つに財政規律を支持する下院議員を多く選出して、責任ある議会にすることを挙げている。
イデオローグについては、前述のフリーダムワークス
[16]の傘下にある「アメリカからの契約
[78]」という団体が十箇条の綱領
[79]をまとめてティーパーティーや議員に署名を求めているが、この綱領では経済政策への提言のみで、ティーパーティーが持つ右翼的主張は含まれていない。また提言自体がそもそも具体性がなく、クルーグマンなどはフリーダムワークスの政策形成能力に疑問を呈し、妨害しようとするばかりで、信頼できる経済政策は持ち合わせてないのではないかと批判した
[64]。このアメリカからの契約は、2010年の中間選挙での共和党の公約にも採用されたが、この公約に対しては保守派・リベラル派の双方から具体性に乏しく過去の公約の焼き直しにすぎないと批判されている
[80]。
運動でもっとも多い要求は「小さな政府の実現(45%)」で、「雇用創出(9%)」「減税(6%)」が続く
[44]。ティーパーティーは雇用創出のための大規模な財政支出を”政府による過剰な介入”と批判しており、不況や雇用情勢の悪化の渦中でも過度の政府介入を避け、民間の自主性を尊重する
小さな政府の実現を訴えている。いわゆる
リバタリアニズムの主張である。しかしロン・ポールのように最初から対外不干渉主義を明言するのでなければ、軍事費と債務の膨らむ戦時下で、しかも税収が減少するリセッションの最中にあって、減税と財政規律の両方を実現することはほとんど不可能と言っていいほど困難であり、(結果的に主張とは正反対になる)無責任な
ポピュリズムに陥る危険を孕んでいる。
運動は共和党の支持基盤である右派を活発化させたが、同時に過激派、愛国主義、極右主義をも巻き込んでしまった。ティーパーティーが純粋な
保守主義の主張を掲げて、押し広めれば広めるほど右翼的な主張も目立つことにもなるため、前述のような偏狭で排他的なアメリカの姿をも映し出しだすことになって、無党派層や共和党の穏健派までも遠ざける結果になるのではないかと危惧され、浮動票の取り込み戦略を阻害する可能性がある。後述するが、オドネル候補やアングル候補の例がそれにあたり、極端な右傾化はアメリカの分裂を際だたせるだけで、反対勢力に逆に利をなす。ティーパーティーが
共和党穏健派の候補をしばしば嫌悪するのも懸念材料だ。実際、共和党主流派が推薦する候補以外の候補をティーパーティーが支持して選挙で勝利したことがあり、これも後述するが、ペイリンの地元である
アラスカ州では予備選に敗れた
マーカウスキー候補が第三候補として出馬し、共和党の票が割れる危機に瀕してる。
このような事態になる前から、共和党主流派は草の根保守との連合を模索してきた。しかし
共和党全国委員会長マイケル・スティールがシカゴでのティーパーティー集会で発言する機会を求めて、拒絶されたという経緯がある
[81]。共和党実力者の
ミシシッピ州ヘイリー・バーバー知事がWSJ紙上で反オバマという共通の目的でティーパーティーと共和党主流派は連合すべきだと訴えるなど
[82]、中間選挙を睨んで現在も引き続き共和党は取り込みを図っているが、ティーパーティーと一口にいっても、草の根保守はその発言の内容やトーンからおおよそリバタリアン系と右派系とに色分けが可能で、そもそも彼ら自身が一枚板ではない。なかでも、リバタリアン系の小さな政府主義者の主張は、共和党の政策に同調するものではなく、しばしば第三党的と評されるが、特に外交政策においては海外展開の縮小や国防予算の大幅な圧縮を求めているという点において決定的に対立する。その代表格であるロン・ポールは、
フォーリン・ポリシー誌に寄稿して、共和党がティーパーティーを取り込んで利用しようとするだけで、ティーパーティーの主張には目を向けてない所を批判した
[83]。また右派系(しばしば”サラ・ペイリンのティーパーティー”と揶揄される方)も、中道とのイデオローグ上の違い、既成政治への不信感から、独自路線を保とうとする団体が多いようである
[84][71]。サラ・ペイリン本人は、まだ将来の大統領選への態度を表明してないためか、日和見的態度をとっており、彼らの指導者のように振る舞ってティーパーティーの支持をあてにしながらも、共和党主流派とも決定的な対立はせず、一部は協力をしている。
このような事情のため、草の根運動であるティーパーティが保守層を結集して無党派層までも取り込むのか、あるいは共和党を穏健派と草の根保守とに分裂させるだけなのか、評価は定まっていない。
ティーパーティーの投票行動 [編集]
2010年の中間選挙にむけてアメリカ各地では予備選が行われているが、ティーパーティーはしばしば独自の投票行動を見せていて、共和党内部での勢力を拡大している。このようにティーパーティーが予備選において候補者の保守度合いを測る
リトマス試験紙となるのは共和党にとっては必ずしも好ましいことではないが、現在、彼らの動向は注目されている。ギャラップの世論調査によると、有権者の63%は現職議員の大半は再選に値しないと答えており、再選に値すると答えた32%を大きく上回る。アウトサイダーの新人有利の風が吹く選挙戦となっている。
共和党予備選では、サラ・ペイリンがテコ入れした候補は上院で7勝2敗、下院で11勝6敗、州知事選で6勝3敗となった。彼女は独自に「
ママ・グリズリー[85]」と自ら名付けた保守派の女性候補者グループを重点的に応援している。ペイリンとティーパーティーの支持不支持は一部重複・一部対立するが、結果的にティーパーティーが推す候補者は、上院で8候補、下院では5候補、州知事選では3候補が指名を獲得した
[86]。
| この節は現在進行中の事象を扱っています。記事の内容は最新の情報を反映していない可能性があります。 |
アメリカ上院選挙の改選州
民主党現職2人が改選となる州 民主党現職の州 民主党現職の引退または予選敗退した州 共和党現職の州 共和党現職が引退または予選敗退した州 非改選州
上院選挙 [編集]
アメリカ合衆国上院は100議席あり、改選前で民主党59(独立系2を含む)と共和党41という情勢であった。そのうち2010年中間選挙で改選されるのは37議席で、現職を保持するのは民主党19、共和党18である。予備選の結果、民主党から現職12名と新人または元職25名、共和党から現職10名(1名は指名外の記名候補)と新人または元職28名、無所属(共和党系)から1名が立候補し、さらにその他の党から4名が立候補している。戦前の予想では、民主党への逆風が強く、勢力の逆転まで至るかが注目されている。
- 2010年1月19日に、エドワード・ケネディ上院議員の死去に伴う補欠選挙で、ティーパーティー・パトリオッツは新人のスコット・ブラウン候補を擁立して、共和党予備選でマサチューセッツ州で従来から指名候補者だったロビンソン候補を大差で破った。さらに本選でも「カート・シリングはヤンキースファン」との失言をした民主党候補マーサ・コークリー州務長官を破って当選。これによりマサチューセッツ州の上院議席のうち1つは一足早く2013年まで共和党のものとなり、上院の議事進行妨害行為を阻止するのに必要な安定多数である60議席を民主党は割ることになった。これで一時的ながら、医療保険改革に待ったをかけることに成功した。(しかし結局は3月に医療保険改革は議会を通過した)
上院予備選 [編集]
- 2010年5月8日、ポークバレル[13]つまり地元利益誘導型のベテラン政治家で、超党派の立場でオバマ大統領の景気刺激策に協力したユタ州の共和党現職ボブ・ベネット上院議員が、四期目の共和党指名候補者になるのをティーパーティーは阻止した。ユタ州は、ベテラン議員が脱落して後は接戦となったが、ティーパーティーやフリーダムワークス、ロン・ポールなどが支持した弁護士マイク・リー候補が、第三投票での劣勢を、6月22日の決選投票において僅差で逆転するという劇的展開で指名を獲得している。ティーパーティーの資金力と動員力を見せつけた選挙戦であった。
- 2010年5月18日、アーカンソー州の共和党上院予備選で、下院議員ジョン・ブーズマン候補に対して、ティーパーティーは彼がブッシュ前政権やオバマ政権時代の赤字予算の作成に関与した大きな政府の責任を問うとして、ティーパーティー独自候補を擁立した。結果は、対立7候補を破るブーズマンの圧勝だったが、直接刃向かった例である。またティーパーティーは、民主党上院予備選にも影響を与えており、リベラル派の現職ブランチ・リンカーン上院議員の対立候補ビル・ホルター州副知事を支持して、窮地に追いやった。リンカーン議員は医療保険改革法案に反対票を入れて批判をかわし、結果はきん差でリンカーンの勝利だったが、本選での世論調査ではブーズマンが優勢である。
- 2010年5月18日、ケンタッキー州の共和党上院予備選で、同州出身の共和党院内総務ミッチ・マッコーネルや、チェイニー前副大統領らの支援を取り付けていた共和党主流派の同州務長官グレイソン候補に対して、ロン・ポールの息子(次男)で、眼科医のランド・ポール候補は、ティーパーティーの草の根的な熱烈支援を得て、地滑り的な勝利を収めた。ランド・ポールは父親同様にリバタリアンの小さな政府論者で、インテリ層に高い人気を誇り、本選でも民主党候補に対して世論調査では優勢を示している。
- 2010年6月8日、カルフォルニア州の共和党上院予備選で、HPのCEOなどを歴任したシリコンバレーの著名な女性経営者カーリー・フィオリーナ候補は、対立2候補を破って勝利した。彼女はIT長者であり、いわゆる草の根系候補ではないが、2008年大統領選挙で遺恨のあったサラ・ペイリンと和解してその支持を受け、圧勝している。
- 2010年6月8日、ネバダ州の共和党上院予備選で、すでに4月15日のティーパーティー・エクスプレスで推薦を受けていたシャロン・アングル候補は、保守派のラジオ司会者マーク・レヴィンらの支持もあり、対立8候補を破って勝利した。ティーパーティーは、同州の上院議員である民主党上院院内総務ハリー・リードを目の敵にしており、最重点選挙区である。民主党と既成候補の逆風のなかで、本選でも世論調査の経過ではアングル候補がやや優勢であったが、11月が近づくにしたがってアングル候補の「アメリカは国連から脱退すべき」や「教育省・エネルギー省の廃止」、「失業保険廃止」など極端な主張に辟易した世論が右傾化に反発し、低迷していたリード議員の支持率の方が急上昇してきて逆転した。現在は一進一退の攻防が続いているが、保守への偏りが無党派層を遠ざけてしまった例になる可能性がでてきた。民主党の選挙担当であるロバート・メネンデス上院議員はアングル候補の予備選勝利について「共和党の権力層に近い候補者より、過激な候補者を選択した1つの例だ」との見解を示している。
- 2010年8月24日、アラスカ州の共和党上院予備選で、現職の共和党リーサ・マーカウスキー上院議員に対して、ティーパーティーとサラ・ペイリンは、陸軍士官学校出身の弁護士ジョー・ミラー候補を支持して、接戦の末に勝利した。リーサ・マーカウスキーの父親フランク・マーカウスキーは、前職の同州上院議員で、かつペイリンの前のアラスカ州知事であり、2006年の州知事選ではお互いに中傷合戦を繰り広げた対立候補であった。マーカウスキー家と遺恨のあるペイリンは、リーサ・マーカウスキーが共和党主流派で「十分に保守的ではない」として強くミラー候補を肩入れして、3%差の僅差での勝利だった。アラスカ州はレッドステートと呼ばれる共和党の地盤で、共和党予備選に勝つことは、そのまま上院の議席を意味すると言われるため、敗北してもまだ僅差で本選での巻き返しの可能性のあるリーサ・マーカウスキーは記名候補(ライトイン)として出馬した。共和党の票は割れることになったが、依然として共和党のミラー候補が世論調査では優勢で、民主党候補が勝つ見込みはほとんどない。しかしミラー対マーカウスキーは保守分裂の激しい選挙戦が予想され予断を許さない。
- 2010年8月24日、アリゾナ州の共和党上院予備選では、2008年大統領選で共和党大統領候補となった現職の上院議員ジョン・マケインが楽勝すると思われていたが、ティーパーティーの一部が「マケインは正真正銘の保守ではない」というラジオの保守派キャスターで元下院議員ヘイワース候補の支持に回ったため、激しい選挙戦となった。中道派であるマケインは、不法移民対策での弱腰や、妊娠中絶や生命倫理で批判され、一時、窮地に立つ。彼はなりふり構わずに、保守路線に軌道修正し、巨額の選挙資金を投じて徹底的なネガティブキャンペーンを行って、最終的には全面的に勝利したが、共和党主流派は右派におもねることで辛うじてティーパーティーの攻撃をかわした格好だ。なおマケインとサラ・ペイリンの大統領選後の確執は有名だが、ペイリンはマケイン支持を表明していた。
- 2010年8月24日、フロリダ州の共和党上院予備選では、共和党穏健派のチャーリー・クリスト同州知事が出馬して楽勝と思われていたが、ティーパーティーの熱烈支持を受けたキューバ移民二世の同州下院議長マルコ・ルビオ候補に猛追されて、クリストは辞退に追い込まれた。クリストは2008年大統領選挙で大統領候補の一人と目された有力知事だったのだが、オバマ大統領の景気刺激策に賛成票を入れるなど、保守派の批判を浴びていた。結局、彼は第三の無所属候補として出馬することになり、ここでも共和党の地盤での保守分裂となった。ハンサムなルビオは「共和党のオバマ」と称される共和党の次世代スター候補で、妊娠中絶反対や小さな政府などを主張する保守派。
- 2010年9月14日、デラウェア州の共和党上院予備選で、共和党穏健派で無党派にも幅広い人気を誇った元同州知事で下院議員キャッスル候補に対して、ティーパーティーとサラ・ペイリン、マーク・レヴィンらは、クリスティン・オドネル候補を支持して、終盤で一気に劣勢を巻き返して勝利した。しかしオドネル候補は「マスターベーションに反対する」や「(タイム誌の表紙になったという理由で)オバマは悪人[87]」と言うなどしばしば奇妙な発言をすることで知られる右翼の超保守派で、進化論を否定し、共和党関係者ですら妄想的と眉をひそめる人物である。民主党寄りの無党派層を取り込める可能性のあったキャッスル候補で共和党主流派は選挙を勝負したかったので、ティーパーティーに阻止された格好だ。ブッシュ前政権で戦略担当だったカール・ローブなどは彼女のようなガチガチの保守が共和党の候補者では本選に負けると嘆息する。奇妙な発言であってもメディアに取り上げられることが多いので、良くも悪くも、第二のサラ・ペイリンとの評価もあるが、過剰な注目のマイナス効果として学歴詐称疑惑なども報じられ、その後は支持率を落としている。もともとデラウェア州は民主党の地盤であり、世論調査でもオドネル候補は劣勢で、彼女は前回の2008年上院選でも現在のジョー・バイデン副大統領(当時は上院議員)に完敗した。
- 2010年9月14日、ニューハンプシャー州の共和党上院予備選で、地元のティーパーティーは弁護士オビド・ラモンテイン候補を支持して、共和党主流派とサラ・ペイリンなどが支持した前州検察総長ケリー・アヨッテ候補と激しい選挙戦を演じた。結果はアヨッテが得票差わずか1667票で辛勝した。この大接戦の背景はティーパーティーの力によるところが大きく、負けはしたが、選挙を盛り上げ、その余勢をもって本選でもやや共和党有利である。
下院選挙 [編集]
アメリカ合衆国下院は2年に一度全議席(435)が改選されるが、2010年の改選前で民主党(257)と共和党(178)の勢力に分かれていた。大統領選で与党が大勝した後の中間選挙では、”引き潮”という政治力学が働き、例年、与党が不利となるが、2010年は経済の悪化という悪条件も加わり、ティーパーティー草の根保守の活動もある。民主党への逆風は強いが、もともと下院は現職に有利な区割りのため、これだけの逆風でも民主共和両党の現職再選がほぼ確実な選挙区がおよそ4/5を占める。両党は残りの1/5を取り合うわけだが、結果が予想できないほどの接戦となっているのはそのなかでも40前後の選挙区に限られる。しかしそれでも民主党は大敗が予想されており、下院で過半数を割る可能性が高くなっている。(詳しくは「
英語版・下院選記事を参照」)
下院予備選 [編集]
- 2010年3月、イリノイ州第11区の共和党下院予備選で、ティーパーティーの支持を受けたアダム・キンジンガー候補が第2投票で指名を獲得した。本選では現職の民主党デビー・ハルバーソン下院議員に挑むことになるが、優位に選挙戦を進めている。
- 2010年6月8日、サウスダコタ州全州代表の共和党下院予備選で、州議会議員クリスティ・ノエム候補は、ティーパーティーの熱心な支持を受けて、州務長官ネルソン候補など3候補を破って指名を獲得した。ノエムはサラ・ペイリンと同じ「生命を尊ぶフェミニスト(FFL)[88]」という団体に属するプロライフを支持する妊娠中絶反対[89]の保守派。またオバマケアにも反対していて同法の廃止を訴えている。
アメリカ州知事挙が行われる州
民主党現職 民主党現職の任期切れ 共和党現職 共和党現職の任期切れおよび予備選敗退 無所属現職の任期切れ退任 選挙なし
- 2010年6月8日、サウスカロライナ州第1区の共和党下院予備選で、ティーパーティーの支持を受けたトム・スコット候補が、共和党主流派が支持し、前同州上院議員ストロム・サーモンドの息子であるポール・サーモンド候補らを破って指名を獲得した。一方、同州第1区ではリバタリアン党のキース・ブランドフォード候補も、ボストンティーパーティー全国委員会という2006年創立の最も古いティーパーティーグループから公認をうけて立候補しており、ティーパーティー分裂の選挙となった。
州知事選挙 [編集]
アメリカ合衆国の50州およびその他の領土のうち今回改選があるのは37州と
グアム(準州)と
アメリカ領ヴァージン諸島(属領)の39の地域である。改選前の民主党知事は20人で、うち8人が任期切れ、4人が自主的に退任する。ティーパーティーの活動によって前述のフロリダ州知事が無所属に転じたため、改選前の共和党知事は一人減って18人で、うち8人が任期切れ、3人が自主的に退任、1人の現職が予備選で敗退した
[90]。37州のうち24州は現職が立候補しない新人同士の対決で、およそ半数が接戦となっている。
[91]州知事予備選 [編集]
- 2010年6月1日、ニューメキシコ州の共和党州知事予備選で、地方検事スザンナ・マルチネス候補は、サラ・ペイリンの支持を得て、指名候補となった。これでニューメキシコは民主党指名候補の同州副知事ダイアン・デニッシュ候補とで女性候補同士の対決となった。マルチネス候補がもし本選で当選すれば、ヒスパニック系女性初の知事となる。
州知事選でのティーパーティーのシンボル的存在のニッキー・ヘイリー, 2009年6月8日
- 2010年6月8日、メイン州の共和党州知事予備選で、ウォータービル市長ポール・ルパージュ候補が、ティーパーティーの草の根的な支持を得て、対立6候補を破って指名を獲得した。
- 2010年6月22日、サウスカロライナ州の共和党州知事予備選で、ミット・ロムニー前州知事やサラ・ペイリン、ティーパーティーの支持を受けた同州下院議員ニッキー・ヘイリー候補が、終盤に急速に支持を伸ばし、チェイニー前副大統領らが支持した共和主流派の下院議員グレシャム・バレット候補を、決選投票で破って指名を獲得した。ヘイリー候補はインド系アメリカ人、かつシーク教から改宗したメソジストということで、人種差別の疑惑が付きまとうティーパーティー系では異色の候補である。彼女がもし本選で当選すれば二人目[92]のインド系知事となる。サウスカロライナ州は今回任期切れで退任するマーク・サンフォード知事が不倫失踪事件を起こしたことで有名だが、スレンダーな美人のヘイリー候補にも予備選の最中に二人の不倫相手と名乗る男性がメディアに登場するなどの騒動があった。
- 2010年9月14日、ニューヨーク州の共和党州知事予備選で、ティーパーティーの熱心な支援を受けた不動産開発業者カール・パラディーノ候補が、元下院議員リック・ラジオ候補らを破って指名を獲得した。イタリア系移民二世で、ブルドッグを連れて闊歩する姿がいかにもという不動産屋のパラディーノ候補の勝利は予想外のもので、ニューヨークのローカルニュースを驚かせた。
その他 [編集]
呼称について [編集]
日本において「ティーパーティー」は、茶会や茶会運動、茶会党などとも表記されている。朝日新聞はティーパーティーかティーパーティー(茶会)。毎日新聞と読売新聞はティーパーティー、ティーパーティー(茶会運動)、茶会運動など。MSN産経ニュースやCNN.JP、時事通信などはそのままティーパーティーのみ。ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版は通常記事ではティーパーティーであるが、翻訳記事では茶会党が用いられている。ただしテレビのニュース放送では、ティーパーティーと必ず一回は言って説明しており、茶会や茶会党などの漢字表記は、紙面での字数制限に則したもののようである。
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